サブスクやストリーミングもいいけど…物理メディアに回帰の声も

ストリーミングやサブスクの闇。今改めて「物理メディア」に立ち返るべき理由

もういい加減、認めなければならない時期に来ています。

ストリーミングアプリやデジタル配信は、メディア業界の中でも特にクリエイティブな分野をめちゃくちゃにしています。

もしかしたら、はじめから物理メディアこそが正しい選択肢だったのかもしれません。

ストリーミングとデジタルメディアの問題

これは大袈裟な言い方に思えるかもしれませんが、しかしまったくの間違いではないのです。

公平を期すために言っておくと、ストリーミングアプリのすべてが悪というわけではありません。

ストリーミングサービスとオンラインストアのおかげで、手持ちのどんな端末からでも、お気に入りの番組、バンド、ビデオゲームにアクセスできます。

また、そうしたサービスのおかげで、欲深いダフ屋や怪しい海賊版サイトの餌食にならずに、従来のメディアを合法的にサポートすることができています。

しかし、ケーブル会社やレコードレーベルといった「束縛」から自由になり、それらに一泡ふかせるための一手としてはじまったはずのストリーミングサービスも結局、新しい「大地主」になる会社を生んだだけでした。

顧客のことも、自らの配信するメディアも、それを制作する人たちのことも尊重しない会社を。

ストリーミングコンテンツの不安定さ
人気ドラマ『The Office』のNetflix撤退や、映画『マネキン』がデジタルで視聴できないのに『マネキン2』は視聴できる、といった苛立ちのタネは、デジタルメディアの新たな様相のなかにある現実の、ほんの一部なのかもしれません。

しかし、そのような永続性のなさは、デジタルメディアの特徴というよりもバグのように見えはじめています。

この8月にはWarner Bros. Discoveryが「制作者に再放送料を払うのをやめたいから」というだけの理由で、自社テレビ番組を『HBO Max』アプリからだしぬけに引き上げたことがわかりました。

HBO Maxオリジナルコンテンツを観られることを期待して、月額14.99ドルを払った人には、お気の毒としか言いようがありません。

ビデオゲームはいつかプレイできなくなる
一方、デジタルビデオゲームは、デジタルの棚から頻繁に外され、購入も再ダウンロードもできなくなることがしばしばあります。

すでにそのゲームを購入してダウンロードしていても、いつかは必ず起きる「サーバー停止」に見舞われれば、マルチプレイヤーモードや、場合によってはゲーム全体がプレイできなくなることも。

電子書籍にも危機が迫る
音楽、映画、ゲームだけではありません。電子書籍・コミックでさえ、ストリーミングとオールデジタルプラットフォームのせいで危機にさらされています。

それは、最近のAmazonによるComixologyの全面的な見直しに対する反発を見ればよくわかるでしょう。

この見直しにより、一部のユーザーは、新規のコミック購入がほとんどできなくなりました。さらに、望まれていないレイアウト変更のせいで、読めなくなったコミックもあったのです。

ストリーミングの根本的課題
メディアの種類に関係なく、どんなストリーミングアプリでも、サブスクリプションを解約すれば、ライブラリにアクセスできなくなります。

突然サービスが停止することもありますし、つながらなくなることもしょっちゅうです。

そして、これは言うまでもないことですが、ストリーミングビジネスは、そのアプリを通じて作品を配信するアーティストや制作者を搾取することで知られています。

そうした数々の問題が、利用者が購入したコンテンツを楽しむことをますます難しくし、メディアの保存を事実上、不可能にしています。

あらためて物理メディアを選ぶ理由
そうした問題と無縁のものがあるのを、ご存じですか? それは物理メディアです。

物理メディアに問題がない、と言っているわけではありません。

ストリーミングが間違いなくメディアへのアクセスを容易にし、一見するとコンテンツが「無制限」に供給される(サービスが提供されているかぎりは)のに対し、物理メディアは、限られた量でしか存在できず、企業にも転売人にも搾取されやすい状況になりがちです。

さらに物理メディアは、すべての物質的存在の例に漏れず、劣化します。紛失や破損、盗難の可能性もあります。

しかし、所有権、顧客の力、メディア保存に関しては、物理メディアは、ほぼあらゆる面でデジタルとストリーミングよりも優れているのです。

物理メディアは死んだのか?

たしかにハードコピーの購入は、どんな人にも、どんな場合にも適しているわけではないかもしれません。

けれども物理メディアは、趣味人や歴史家や古物商にとどまらず、多くの人にとっても価値があります。

そして、誰になんと言われようと、物理メディアは時代遅れだとか役に立たないなどと思ってはいけません。

ほとんどのメディアは、現在もまだ物理形式でしっかりリリースされています。主要な劇場用映画はブルーレイで発売されますし、ほとんどのテレビ番組も、ディスクが何枚も入った大きなボックスで全シーズンが販売されています。

単に、以前よりも見つけにくくなっているだけです。

物理メディアのゲームは値下がりが早い
ビデオゲームはもう少し複雑になります。

最近の「物理」ゲームの多くは、オフラインのシングルプレイヤーゲームであっても、やはりオンライン接続が必要です。

とはいえ、ディスク上(もしくは、Nintendo Switchの場合はカートリッジ上)で完全にプレイできる新しいゲームもたくさんあります。

古いゲームや、ビンテージもののコンソール、希少なリリースを買う場合は途方もない金額になることもありますが、Limited Run Games、Super Rare Games、Strictly Limited Gamesといった会社が、通常なら箱入りバージョンでは発売されないインディーズ作品の物理コピーを作成しているのです。

場合によっては、古いゲームを再版することもあります。

また、物理ビデオゲームは一般に、デジタル版よりもかなり速く値段が下がります。ときには、リリースから数日や数週間で、大幅に値下げされることもあるくらいです(任天堂のゲームは例外ですが)。

物理メディアでアーティストを支援する
CDも依然として、高品質の音楽を収集・鑑賞するための優れた方法です。

さらに、レコードやカセットテープといった「時代遅れの」フォーマットも、インディーズのレコードレーベルや配給業者、コレクター市場のおかげで人気を復活させています。

そうした昔なつかしいレトロな媒体は、当初はサブカル好きの箔づけ手段だったかもしれませんが、急速にストリーミングよりも確実に音楽を聴くための方法になりつつあります。

しかも、物理媒体の音楽をアーティストやレーベルから直接購入するほうが、微々たる額しか支払われないストリーミング経由での視聴よりも、金銭的に支援する良い方法にもなるのです。

コストの問題

物理メディアをめぐるもう1つの懸念がコストです。

新しく出る作品をひとつひとつ買っていたら、ストリーミングの月額料金よりも高くつくのでは?

たしかに、とりわけ映像やゲームや音楽の新作をたくさん購入する人の場合はそのとおりですが、それは必ずしも悪いことではありません。

個人的な体験から言えば、物理メディアを購入するほうが、ストリーミングやレンタルの場合よりもしっかり作品と向き合えます。

ストリーミングの場合、アーティストの作品は埋め草のように、つまり、私たちの脳にドーパミンを分泌させるための「使い捨てコンテンツ」のようになりがちです。

とはいえ、ストリーミングやデジタル購入にも役割があることは間違いありません。

自分の観るもの/プレイするもの/読むものをそれほど気にかけていない場合や、突然消えたりしてもかまわない場合には、価値のある選択肢になるでしょう。

しかし、所有とストリーミングに違いを見いださない人にとっても、物理メディアのほうがデジタルよりもつねに信頼性が高いという点は変わりありません。

コンテンツと確かな関係を築くために
デジタルコンテンツは、現れては消えていきます。

サーバーはオフラインになりますし、別のアプリに移行すれば、ユーザーはコンテンツを失います。

でも、あなたのリビングルームにある映画の棚は、どこにも行きません。

そして、それにふさわしい機器を持っているかぎり、好きなときにいつでも、いつまでも楽しむことができます。

新サービスを契約したりアプリをダウンロードしたりする必要はありませんし、無線接続に手を焼いたりすることもないのです。

ネットの声

「今の時代オールドメディアを追い続ける方が将来的には得すると思います。ネットやサブスクに移行して発行数が減っているなら尚更。私はTCG(トレーディングカードゲーム)をプレイします。30年近い昔のカードは今凄い価値を持っています。ネット上にあってもサービスがいつまで存在するかわからないし他人にも譲れない。ほどほどに付き合うべきだと思います。」

「確かにサブスクでの支払い、ストリーミング、クラウド配信によって所有から”解放”された側面は、一方で一切資産が築けないという裏面でもある。利用者にはクラウド企業が永続する、そしてサービスをずっと続けてくれるという淡い期待がある、グーグルやAmazonが潰れるそんなことはありえない、というレベルの実際は根拠薄弱なものでしかない。しかも、クラウド企業の検閲の問題もある、時代が変わってイデオロギーや政治潮流の変化で、ある日突然自分のお気に入りの音楽や著作物が配信から外される可能性だってある。オールドテクノロジーに固執する人が時代一周りして一番賢かった、というのはあり得る話だ。」

「サブスクもいいけどさ、もし出演者が不祥事起こしたりして急に見れなくなったりとかあるし。思い入れ深い作品は円盤で手元に残すのが安心。…でもメディアの世代交代とかデジタルリマスター商法とかで後から出た方買ったら良かったって問題も。」

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