
ナニこの「ぶっといタイヤ!」 ライバルびっくり「スズキ・バンバン」の伝説 “バンバンっぽい”バイクが続出!
1960年代後半にホンダがリリースしたモンキー、ダックスといったレジャーバイクは当時のアメリカで絶大な評価を受けました。
この評価が逆輸入のようなカタチで日本に戻ってきて、1970年代初頭より一大レジャーバイクブームを巻き起こします。
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レジャー用・業務用双方で重宝されたバンバン
このブームに伴い、「ホンダに追いつけ追い越せ」とばかりに他社からも自由で楽しいレジャーバイクが複数リリースされました。
そんな中、スズキでは1971(昭和46)年にバンバン90というモデルをリリース。
どことなくダックスのようなフレームのモデルでしたが、その足回りが驚愕。
それまでになかった、ぶっといタイヤを履いていたのです。
この新設計のぶっといタイヤは、前後輪とも幅170mmあり、「レクタングルタイヤ」「バルーンタイヤ」と呼ばれていました。
砂地、湿地、草原、山坂、雪道といった悪路での走行を可能とし、またタイヤの空気圧をその都度調整できるよう、エアポンプも装備していました。
見た目的なインパクトもさることながら、2ストローク・4段リターンのミッションによりアクセルをひねった際のレスポンスも高く、実に独特で面白い乗り味を持ったモデルでした。
バンバンは実際にレジャー用途だけでなく、ゴルフ場や農村地域などでも重宝され大好評となり、翌年の1972(昭和47)年には、バンバン50、バンバン125も登場しました。
ホンダ・ダックスの開発当初のコンセプトは「子ども向けのモンキーに対して、ママさん向けのバイク」で、初期モデルには花柄シートなどがラインナップされていました。
バンバン50もそれを意識してか「女性にも乗りやすいレジャーバイク」と謳われ、同じく花柄シート付きのデラックスモデルもありました。
また50モデルは前後輪とも135mmのタイヤ幅にサイズダウン。特別なバイクファンでなくとも親しみやすい1台でした。
一方のバンバン125は、初代のバンバン90よりも走破性を高めたモデルでした。
前輪幅は137mmにサイズダウンする一方、後輪幅は170mmのまま。5段リターン式ミッションを搭載しシートも大型に。ある意味でデュアルパーパス的な顔を持ったバイクでした。
地球に乗るならバンバン
1973(昭和48)年、これらのバンバンシリーズにさらなる1台であるバンバン75が登場します。
そのキャッチコピーは、「地球に乗るならバンバン」でした。
バンバン50をベースにした親しみやすいコンパクトなモデルで、エンジンのみ75ccに上がったもの。
ただし、ここで少々疑問なのが「何故75ccというやや半端な排気量のモデルを作ったか」という点です。
これはあくまでも筆者(松田義人:ライター・編集者)の推測ですが、当時アメリカで支持を得たカワサキのレジャーバイク、MT1(後のKV75)が75ccであり、同じくアメリカ市場開拓を目指していた当時のスズキは、このMT1にぶつけるようにバンバン75を開発したのではないかということ。
公式発表がないので推測に過ぎませんが、結果的にバンバンシリーズは「50cc、75cc、90cc、125cc」という4つの排気量モデルで展開されました。
レジャーバイクブームの終焉
ただし、以降バンバンシリーズの新モデルは登場することなく、レジャーバイクブームの終焉と共に姿を消しました。
一方、最大の持ち味だった悪路でもバンバン走れる「ぶっといタイヤ」の走破性のニーズが全くなくなったわけではなく、1980年代にも「なんとなくバンバンっぽい」バイクがヤマハ、ホンダから続々と登場します。
まず、ヤマハが1985(昭和60)年にリリースしたのがBW80、BW200、BW350というモデル。
バンバンのようなぶっといタイヤを履いていました。
日本では1年限りの販売だった一方、アメリカでは1989(平成元)年まで生産され続け、相応のニーズがあったことが伺えます。
また、ホンダは1986(昭和61)年にファットキャット(TR200)という、ヤマハのBWシリーズにもよく似たモデルを発売します。その名を直訳すれば「デブ猫」となります。
こちらもまたバンバンのようなレクタングルタイヤを履いたモデルで、今見てもなかなかカッコ良いのですが、基本はアメリカ市場での販売。
日本にも逆輸入のカタチで保安部品をつけたモデルが一部販売されましたが、販売期間がたった2年だったこともあり、その個体数は圧倒的に少なく入手困難な1台となっています。
また、ヤマハは1987(昭和62)年に後輪幅を180mmにしたTW200というモデルを発売。
今見れば、アメリカでは相応のニーズがあったBWシリーズを「日本市場向け」に改善したようなバイクでした。
発売当初こそ注目度が低かったものの1990年代爆発的な人気となり、一大ストリートカスタムブームを巻き起こすに至りました。
スズキのバンバン200で北海道ツーリング行ってた頃…
5速フルスロットルでも速度100km程度しか出ない200cc単気筒には大型バイクの仲間達についていけず、「エンジンが燃えちゃうよ!」ってよく言ってました笑 pic.twitter.com/TqbZBjCLB6— Tsubame@SV650ABS (@tsubameSV650ABS) August 31, 2024
こういった「ぶっといタイヤのバイク」の礎を築いたのがバンバンシリーズと見る向きも多かったことからか、スズキではTW200にも似た「後輪のみぶっといタイヤにした」バンバン200というモデルを発売。
複数回のモデルチェンジをしながら2017(平成29)年の生産終了まで15年間にわたって販売され続けました。
また、2023年の「ジャパンモビリティショー2023」のヤマハブースには前述のTW200をベースにしたハイブリッド3輪駆動モデル、TMWが登場。やはり「ぶっといタイヤ」を履いた1台で、大いに注目を浴びました。
市販化が待ち通しいです。
ここまでの通り、初期のバンバンシリーズはわずか数年で姿を消した一方、その影響が他社のバイクにも及び、また近年までそのDNAが継承され続けたように筆者には映ります。
それが正しければ、1970年代前後のスズキがバンバンシリーズにかけた開発は実に偉大だったと言って良いでしょう。
自由で楽しく、ある面での実用性にスコブル長けていた初期のバンバンシリーズ。
これまで以上の評価を受けて良いとも思うスズキの名車中の名車のように感じます。
今日見かけた珍しい単車。スズキのバンバン200 pic.twitter.com/k5fmqsToxO
— しおまねき (@Tommy_sio) February 17, 2025
ネットの声
「高校2年の時にバンバン125に乗っていました。同級生達は250ccのスポーツタイプに乗っていたのが大半でしたね。そんな中こなバイクは個性が強くて結構目立っていました。3年程乗りましたが調子が今一でしたので泣く泣く手放してしまいましたが、また発売されれば年甲斐もなく乗ってみたいと思っています。」
「当時本田のダックスフンド70乗ってたからな懐かしい、でもバンバンも地元ては乗ってましたね、もしでたなら買うかも知れないなレジャーようとして楽しそうだ。」
「確か、空気入れがついていて路面に合わせて空気圧を調整できた。手動だけど。サンドで低圧にしたり、アスファルトで少し高めたり。」