80年前の戦車!
「兵器不足のロシア遂に…」往年の名車を引っ張り出した思惑とは
2024年10月、ロシア軍の訓練動画に第二次世界大戦で運用されたT-34中戦車が映っていたとしてSNSで話題となりました。
専門家によると、これら車両が訓練に引っ張り出された理由は、ウクライナとの戦闘により訓練車両不足になったロシアが、式典用などで保管していた車両を出してきたからでは、とのことでした。
目次
T-34とはどんな戦車?
第二次世界大戦が終結したのは1945年9月であり、それから約80年が経過しているにも関わらず、ここまで長く使われているT-34とはどんな戦車だったのでしょうか。
まず、T-34は第二次世界大戦で最も多く生産された戦車になります。
戦後まで含めれば世界最多の戦車は10万両以上が生産されたソ連(現ロシア)製のT-55です。
ただ、T-34の生産数はそれに続く第2位で、その数は約6万4000両にも昇ります。
このうち約3万5000両が大戦中に生産されたものです。
性能に関しても、同世代のドイツ製IV号戦車やアメリカ製M4「シャーマン」戦車などと比べ優れていました。
まず、傾斜した装甲板の多用、いわゆる避弾経始に優れた車体形状により、車重を抑えながら優れた防御力を獲得していました。
加えて車体は電気溶接が多用されていましたが、これは同時期の他国戦車で良く用いられていたリベット止めよりも壊れにくく量産性にも優れていたことから、かなり先進的な構造でした。
また攻撃力も、当初搭載していた76.2mm砲ですら、同時期の他国の戦車と比べると強力で、たとえば大戦初期にドイツ軍の主力だったIII号戦車であれば、正面から軽々と撃破できる性能を誇っていました。
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大戦中も進化
大戦中期以降は、ライバルのドイツが「ティーガー」重戦車や「パンター」中戦車といった強力な新戦車を最前線に投入するようになったため、T-34も火力アップが図られています。
それが「T-34-85」と一般的に呼ばれるタイプで、主砲を長砲身の85mm戦車砲にして、砲塔も大きなものへと換装することで装填手も乗り込めるようにして、貫徹力と発射速度、双方の向上が図られています。
さらに動力がディーゼルエンジンであることも、評価の高い点のひとつです。
現在でこそ世界の主力戦車でスタンダードはディーゼルエンジンですが、第二次大戦当時、まだ多くの戦車がガソリンエンジンを使っていました。
ガソリンエンジンの燃料であるガソリンは氷点下でも可燃性の蒸気が発生してしまうため、かなり引火しやすく、わずかな損傷でも大爆発を起こすリスクがあります。
しかしディーゼルエンジンに使われる軽油は蒸気が出にくく、直撃しても爆発しないほか、歩兵の持つ火炎瓶での攻撃にも耐えられるということで、戦闘で使うには適しています。
朝鮮戦争でも活躍
足周りには幅広の柔軟な履帯(キャタピラ)を備えており、たとえ地面が泥でぬかるんでいようとも、ものともしない悪路走行性を備えており、整備性も高かったといわれています。
このように、数々の先進的な構造を備えていたことから、第二次大戦後、アメリカやイギリスなど他国が新戦車をリリースする中でも性能的な優位性を保つことに成功します。
たとえば大戦終結の5年後に起きた朝鮮戦争では北朝鮮軍の戦車として実戦投入されます。
戦車に不向きといわれた地形を踏破し、かつ当初アメリカ側が投入したM24軽戦車はもちろん、M4「シャーマン」戦車ですら太刀打ちできない高性能っぷりを見せつけたのです。
より強力かつ新しいM26「パーシング」戦車に比肩する優秀さを、アメリカを始めとした西側諸国に見せつけるまでに至っています。
その後もたびたびT-34は世界各地の戦いに投入されています。
明確に記録されているのは、1990年代のユーゴスラビア紛争です。
ただ、それ以降も使われているようで、2000年代に起きたリビア内戦やアフガニスタン内戦などで自走砲代わりに用いられたと言われています。
冒頭に記したロシアで使われている車両は、さすがに訓練で使用するのが終わったら再び式典用に戻ると思われ、ウクライナへ実戦投入する可能性は低いと予想されます。
ちなみに、ラオス陸軍は2019年まで運用しており、北朝鮮軍ではいまだT-34が予備兵器として残っているとの噂もあります。
ひょっとしたら今後もどこかしらの戦場で最前線に引っ張り出される可能性はあり得なくはないでしょう。
ネットの声
「戦争では少々の性能差は数で圧殺できるから、生産能力生産数は重要。
大戦中に年1万両ぐらいも生産してたってのが戦争を実感させる。
現在だと戦車は1両数億円だから、戦車だけで数兆円を投入するわけだ。まさに工業力経済力の戦い。」「やはり 有事の時に古い兵器のストックは重要だと改めて感じさせられるな。仮に古い兵器で実戦には投入しないにしても新兵を相手にした訓練用にはある一定の訓練効果は得られると思う。
自衛隊の場合有事が起きた場合持ってる戦車全てが実戦配備になってしまうほど数が少ないから有事の時に自衛隊に入ってきた新兵を訓練するための戦車がない。机の上で使い方を学んだだけでは正直 使い物にならないだろう。全く同じではないにしても古い戦車は 訓練用として使えるから やはり大事に取っておくということは大事なことだと言える。」「戦車不足が深刻だからでしょう。
全ての訓練で主力戦車が必要かと言えばそうでもないケースがあると思われ、戦車との連携といった「歩兵の動き」に特化する様な部分的な訓練等なら問題ない様に思う。主力戦車を初め、想定される戦場により近い形であれば様々な要素を含んだ複合的な訓練が出来るので、可能であればその方が効率が良いと思われる。
ただまあ、旧日本軍でもそうだけど、戦局や軍事予算、生産力等の複合要因が大きく絡む訳で、戦線の拡大と消耗の大きさに戦車の補充がひっ迫といった戦車不足を露呈しているのは間違いない。」