環境省は1月17日、水生昆虫タガメなど3種を「特定第2種国内希少野生動植物種」に指定。

2月10日から販売目的の捕獲や売買を禁止すると発表しました。

生息数が減少

タガメはかつて本州や九州の水田や沼地に広く生息していましたが、販売目的の大量捕獲や都市開発による生息数の減少を受け規制対象にしたものです。

タガメは体長5センチほどの日本最大級の水生昆虫で愛好家も多いのですが、環境省によると東京都や滋賀県などでは絶滅したとみられるなど生息数が減っています。

タガメのほか、関東の一部などに生息するトウキョウサンショウウオや、静岡県より西の河川に生息する淡水魚カワバタモロコも「特定第2種」に指定しました。

違反すると、個人の場合5年以下の懲役または500万円以下の罰金。

法人では1億円以下の罰金が科されるのですが、趣味の採集などは規制の対象外となります。

カメやヘビも食べる

タガメをはじめとする水生昆虫のコオイムシ科について詳しく解説した総説論文が、学術誌「Entomological Science」3月号に発表されています。

数十年にわたるさまざまな研究をまとめたもので、コオイムシの仲間は貪欲な捕食者で、水鳥のヒナから毒ヘビまで何にでも襲いかかるというのです。

米国コネチカット州にあるトリニティ・カレッジの上級講師チャールズ・スワート氏は彼らを「待ち伏せ型の捕食者」と表現しています。

「水草につかまってじっと待ち、目の前で動いたものは何でも捕まえて食べようとします」

コオイムシの仲間はほぼ全世界に分布し、約150種が知られています。

最も大きな種は南米に生息するナンベイオオタガメ(Lethocerus grandis とLethocerus maximusの2種がほぼ同じ大きさで、日本ではどちらもナンベイオオタガメと呼ばれる)。

その体長はベースボールカードより大きく、10センチを超えるというものです。

論文を執筆した長崎大学准教授で昆虫学者の大庭伸也氏は、7歳のときにペットショップで初めて見て以来、タガメに魅了されてきたということです。

「日本の昆虫学者や愛好家にタガメは人気があります。形がかっこいいからではないでしょうか? また、絶滅危惧種という希少性からも人気があるのかもしれません」

と大庭氏は話します。

例えば、前脚はポパイの力こぶを連想させるというのです。

餌となりうる動物ならなんでも

論文を執筆するため、大庭氏はコオイムシの仲間に関する論文を片っ端から読んだそうです。

その多くは、大庭氏自身が日本での研究をまとめたもの。

日本では、研究が進んでいるタガメ(Kirkaldyia deyrolli)をはじめ、水田や湿地に4種が上位の捕食者として君臨しています。

タガメは茶色がかった大きな体を水草にうまく溶け込ませます。

頭を下にして水草からぶら下がり、尻から飛び出した「呼吸管」を使って呼吸できるのです。

獲物が近くに来ると、タガメは前脚で素早く捕まえ、中脚と後脚で抱きかかえます。

さらに、短剣のような吻(ふん)を獲物に突き刺し、体内に酵素を送り込むのです。

おそらく麻酔効果のある化学物質です。

スワート氏は、この毒素の成分ははっきりわかっておらず、本当に有毒かどうかも不明だと強調しています。

「彼らは獲物の組織を分解してから、それを吸い込みます」

大きな獲物の場合、食べ終わるまでに数時間かかることもあるということです。

スワート氏は大庭氏の論文を、

「彼らについて知られていることをすべてまとめた包括的なレビュー」

と評価しています。

卵を守るオス卵を殺すメス

昆虫では珍しく、コオイムシの仲間はオスが卵の世話の大半を担います。

オスがアリなどの捕食者から卵を守ったり、あるいはメスがオスの背中に産卵し、卵がかえるまでオスがずっと背負ったまま暮らしたりするのです。

大庭氏の論文によれば、タガメをはじめとする一部の種では、交尾の相手を探しているメスがほかのメスの卵を食べてしまうこともあるといいます。

「ライバルの卵を破壊することで、メスは交尾の相手を獲得し、卵の世話を任せることができる」

と論文には書かれています。

さらに、タガメの幼虫は成虫と同じくらいタフでなければなりません。

幼虫は最長60日で成虫になります。

ほとんどの種は、小さな獲物が少ない時期にふ化するため、オタマジャクシや小魚など、幼虫は難攻不落に見える獲物を狙うしかないのです。

大庭氏によれば、若い幼虫ほど前脚の先端の爪のカーブが強いため、成虫の前脚よりも相対的に大きな獲物を捕まえやすいというのです。

ただし、食物連鎖という意味では、タガメはしばしば大きな魚や水鳥、ときにはアライグマやカメの餌食になるということです。

東南アジアでは、揚げたりゆでたりして食べる人もいるということです。

タガメを守る

タガメは恐ろしい昆虫のようですが、最上位の捕食者であることは、生態系を健全に保つ鍵を握っていることを意味しています。

水質汚染はタガメの個体数に悪影響を及ぼすのです。

アメリカザリガニやウシガエルなどの外来種がタガメを食べてしまうこともあります。

この重要な生き物を守るため、水質がきれいで、外来種のいない生息環境を守らなければならないと大庭氏は話しています。

ネットの反応

「>>趣味の採集などは規制の対象外となる…この規定が曲者なんだよなあ。他の売買禁止の動物なんかでもそうなんだけど、これだと繁殖したものを売買出来てしまう。繁殖したものと採集したものの区別はつきにくいから、結局、闇で採集する者があとをたたないんだよなあ。どうして趣味の採集がそんなに重要視されなきゃいけないのだろう?個人的には、成年になったら採集するのを登録制にすべきだと思うんだけど?そうじゃないと、現行犯でしか取り締まれないじゃない。」

「なぜ趣味の採取を許容する必要があるの?学術的採取ならまだしも。どんな規制も厳しくできないグダグダな日本。」

「ゲンゴロウも見なくなって久しい…大量捕獲や都市開発による生息数の減少とあるが、諸外国で閉め出されたグリホサートを初めとする農薬バラまくのを止めないとね。」

本気で保護したいなら採集も禁止にしたほうがいいのですが、今回の措置は中途半端という声が多いですね。

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