街中ではあまり見かけなくなったフェンダーミラー。
しかしタクシー会社では、いまなおフェンダーミラーを採用した車両が多く存在し、タクシードライバーからも根強い人気があります。
なぜタクシーはドアミラーではなく、フェンダーミラー採用の車両が多いのでしょうか。
そこには、タクシーならではの理由がありました。
目次
フェンダーミラーは「プロ向け」の装備
かつて一般的だったフェンダーミラーは、いまや「運転のプロ」のための装備であると言えるでしょう。
フェンダーミラーを採用するメリットは、主に3つ挙げられます。
それは「目線移動の少なさ」、「車幅の把握」、「乗客への配慮」です。
目線移動が少なくて済む
フェンダーミラーはその名通り、車両前方のフェンダー(タイヤを覆う外板)部分に取り付けられています。
そのため、ドアミラーと比較すると、圧倒的に目線の移動を減らすことができます。
例えば、運転席(右)から助手席側(左)のドアミラーを確認する場合、首を動かさなければ見ることができません。
一方で、フェンダーミラーの場合は、前を向いている時でも左右のミラーが視界に入っているため、少しの目線移動のみで確認が可能です。
また、助手席に乗客がいる場合、乗客の体でドアミラーが見づらくなってしまうこともあるようです。
フェンダーミラーの採用によって、サイドミラーまでの視線を遮るものがなくなり、視認性の確保にも寄与しています。
今日のタクシー
Y33グロリアHTにフェンダーミラーという取り合わせに、強いこだわりを感じる1台でした。
個人タクシー
日産グロリア
≪2005年5月 東京都中央区≫ pic.twitter.com/9DGI4wLLHT— 小野 久幸(YUKI) (@hisayukiono) May 27, 2021
車幅が把握しやすく、狭い路地でも安心
フェンダーミラーの採用により、わずかながら車幅を抑えることもできます。
そのため、慣れてくると車幅を把握しやすく、狭い路地でもスムーズに運転できるのです。
タクシーは、基本的に左側から乗降しますので、当然車両の左側を路肩に寄せることが多いです。
フェンダーミラーのほうが車幅感覚を掴みやすいので、狭い場所などでも乗客の立ち位置に合わせて車両を寄せやすくなります。
乗客への細かな配慮
先述したとおり、ドアミラーの場合には、首を動かして目線を大きくずらす必要があります。
ですが、運転手が頻繁に目線を動かすと、後席からはチラチラ見られているように感じ、不快感を与えてしまう可能性があるようです。
また、頻繁な首・目線の動きは、「乗客の会話に聞き耳を立てている」という誤解を招きかねません。
フェンダーミラーであれば、目線の動きを減らすことが可能となり、目線を気にせずリラックスしてもらえるという配慮がなされているのです。
フェンダーミラー 昔日本の乗用車はドアミラーが禁止。海外では70年代にはドアミラーが主流で、日本輸出時は換装が必要な為非関税障壁に。1983年に規制撤廃。視線の移動量が少なく歩行者保護にもなるため、タクシーなどで未だに使用例は多い pic.twitter.com/Ur9cORfWjn
— 偏見で車を語るbot (@henken_car) September 19, 2021
タクシーでは今後もフェンダーミラーが主流?
現在の車市場ではドアミラーが主流となっていますが、しばらくの間は、フェンダーミラーが消えることはないと思われます。
タクシードライバーに聞いたところ、「ドアミラーと比較すると、フェンダーミラーは目線の移動が少ないので、圧倒的に後方が確認しやすい」や「タクシーの場合、車線変更も多くなるため、後方確認しやすいフェンダーミラーは便利」という声がありました。
ただし、「ドアミラーよりも対象物が小さく映るため、フェンダーミラーに慣れるまでは注意が必要」とのことです。
乗客への配慮も大切ですが、何より「安全・正確な運転」、そして「実用性」を重視した結果、フェンダーミラーが主流になっているようです。
一般車においては、デザインなどの問題でフェンダーミラーが採用されることは非常に少なくなりました。
しかし、タクシードライバーという「運転のプロ」は、どんな道でも安全に走行し、素早く乗客を目的地に送り届けなければなりません。
そのためには、効率的に後方確認などができるフェンダーミラーは必須の装備と言えます。
いまやマイナーとなったフェンダーミラーですが、タクシーにとっては欠かせない装備の1つであることは間違いありません。
一般車からは消えつつありますが、デザインとは別の点を重視しているタクシーだからこそ、定番の装備となっているのです。