
自由できままなトラック稼業…実はそんなことはないのです。
トラック運転手には制約がいっぱい…豪放磊落なイメージとは裏腹な繊細な作業がそこにはあるのです。
「延着」は事故の次に犯してはならない失態
トラックドライバーの仕事は「トラックの運転」だけではありません。
彼らには「荷物を安全・無傷・定時に届ける」という責務もあり、存在意義からすると、むしろ後者のほうこそ彼らの本職だといっていいでしょう。
それゆえ、遅れて現場に到着する、いわゆる「延着」は、彼らがトラックドライバーとして仕事をするうえで「事故」の次に犯してはならない失態となります。
言うなれば、最も恥ずべき行為の一つなのです。
場合によっては「荷崩れ」と同じように、高額な損害賠償の対象にさえなります。
道路状況は天候や事故の有無などにも左右されますが、雪が降ろうが台風が来ようが彼らには関係ありません。
渋滞や交通規制をかいくぐり、時には仲間と情報共有しながら延着せぬように道路をひた走るのです。
こうして到着した現場周辺で、約束の搬入時間まで「休憩」という名の時間調整を行います。
「早着」も同じくやってはいけないNG行為
一方、そんな「延着」の反義語として「早着」という言葉があります。
意味もまたその逆で、
「指定時間よりも早く現場に入る」ことなのですが、トラックの世界において、この早着も同じくやってはいけない行為であることは、世間にはあまり知られていません。
早着がNGだとされる理由は、「荷主の都合」であることがほとんどです。
現場が1日の作業を円滑に行えるよう、トラックによる搬入は、「朝一番」に集中します。
その際、道中が順調で現場に指定時間より早く到着しても、荷主が各トラックを受け入れる順番を細かく決めています。
到着順にトラックを待たせたり、中には、前のトラックの作業が終わるまで、構内への進入を禁止するところすらあるのです。
「荷主の都合」はそれだけではありません。
時に「1分単位」で搬入時間を指定してくる中、彼らは「近隣住民への配慮」などから、トラックに「現場近くでの待機」をも禁じています。
さらに、その細かい指定時間を守って現場に到着したとしても、構内作業が遅れれば、後に続くトラックの待機時間(=荷待ち)も長くなるのです。
結果的に彼らはその間、完全に居場所を失うことになります。
早く行っても入れてもらえず、近くでの待機も許されない…。
近隣住民への配慮はあってもトラックへの配慮がないといったこうした実情により、搬入先から離れた路上には、深夜に必死の思いで高速を走ってきた彼らの仮眠姿が溢れるのです。
路駐が絶えないのは「改善基準」が一因
トラックドライバーの路駐が絶えないのは、ある「決まり」にも原因があります。
それが「改善基準」です。
この改善基準とは、
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)の略です。
他業種以上に不規則かつ長時間労働になりやすいトラック、バス、タクシーなどの運転業に携わる人のために、給与や全体の労働時間に対する一般的な労働基準を定める「労働基準法」とは別に、働き方や休み方、走り方などを細かく定めている規則なのです。
業界の性質上、この改善基準にはいかんせん「特例」が多いのですが、ドライバーの基本的原則には、以下のものがあります。
- 4時間走ったら30分休憩(通称「430」)
- 運転できる時間は、2日平均で1日あたり9時間以内
- 翌日の勤務まで休息時間を8時間取らねばならない
- 拘束時間は原則1日13時間以内。最大16時間以内で、15時間を超えていいのは週に2回まで。1カ月の拘束時間は293時間以内
本来はトラックドライバーを守るための規則です。
しかし、この義務付けられた休憩によって、彼らはたとえ時間や駐車場所がなくとも、どこかで休憩を「取らねばならなく」なり、むしろ精神的疲労の原因になってしまっているのです。
ネットの反応
「今の世の中、ネット通販が流行ってますね。ネット通販だけではないのですが、注文して手元に届く、店に行って買いたいモノがあって、購入出来る、ってのは、何も注文品が空を翔んでくる訳てはありません。必ず、大小さまざまなトラックによって運ばれて来ます。コメント欄見てますと、汚ないだの、みっともないだの色々批判的なコメントでておりますが、生活必需品等々を運んでるのはトラックドライバーなのです。少しは、理解してあげる心があってもいいんじゃないんでしょうか。」
「真夜中や未明に、道路の路肩に止めてハザードランプ付けてる大型トラックよく見かけます。
お疲れ様ですと言いたい。配送プランてなかなかスムーズには組めませんからね。渋滞などを考慮して大概は長めに組まれていますから、どうしても、どこかで調整するしかない。一気に最初の配送先まで行ってそこで時間まで休みたくても、住宅街の中だったりすると、夜中は迷惑にもなるから、途中で止めるしかない。眠れないドライバーは少なくないと思う。」
「遅延はよくないが早着は荷主も受けてやれよ!早いに越したことないし遅延するよりよっぽどマシ!それでも頑なに定時にこだわるならば敷地内に待機駐車場でも完備したら?路駐待機は事故につながるし危険なんだよ!」
かつてのトラックドライバーは高収入の象徴でした。1台の売上げ100万円超えはザラだったといいますからね。
労働環境が改善したというのは法律上の話であって、トラックドライバーにとっては時短で死活問題になっている話も聞きます。