東京五輪の猛暑対策でマラソンと競歩の会場を札幌市に移す案を国際オリンピック委員会(IOC)が発表しました。

信じがたいことですが「案」というよりも「決定」ということのようです。

大会組織委員会の森喜朗会長は17日、東京都内で取材に応じ、「やむをえない」と受け入れる考えを示しました。

それを受けて、会場変更は確実な情勢で、組織委とIOCが30日から3日間、東京都内で開く調整委員会で正式合意されるとのことです。

東京五輪マラソンは札幌で…

開幕まで300日を切っての変更は、見通しの甘さを露呈した格好となりました。

準備のやり直しに伴う大会開催費の膨張が懸念されます。

本番コースを想定して、練習してきた選手たちからも不満が漏れるのは必至でしょう。

大会準備を監督するIOCのジョン・コーツ調整委員長は17日、毎日新聞の取材に

「東京都民を失望させたことは理解している。必要ならば謝りたい。しかし深夜のドーハと東京の気象条件は似ている。選手の健康を最優先に考えており、テレビで選手が苦しんだり、倒れたりする光景は見せたくなかった」

と述べ、札幌開催が苦渋の決断だったことを強調しました。

コーツ氏が言及したドーハの光景とは、今月6日まで酷暑の中、カタールの首都ドーハで開催された陸上の世界選手権のことです。

オイルマネーで誘致された、初の中東開催で競技の普及が期待されました。

暑さをしのぐため、異例の深夜スタートにしたにもかかわらず、女子マラソンは気温30度超、湿度70%超の過酷な環境に脱落者が続出したのです。

出場選手68人のうち、過去最多の28人が途中棄権。

さらに史上初めて優勝タイムが4時間を超えるレースとなった男子50キロ競歩。

それでも、女子マラソン同様、約4割が棄権に追い込まれたのです。

選手が倒れ込み、担架で運ばれる映像が世界を駆け巡りました。

IOCが急転直下、五輪の会場変更に踏み切ったのはこの後のことです。

水面下での交渉があった!?

コーツ氏や組織委の森会長によると、トーマス・バッハ会長の指示があったということです。


ドーハのレースを受けてIOCと組織委の交渉が始まったのです。

大会中の気温が5、6度低い札幌市を候補とし、マラソンの発着点は札幌ドームとする案が示されました。

森会長は

「東京でもドーハと同じことが起きれば、非難の渦に巻き込まれてしまうため、IOCの権限、バッハ会長の判断で札幌に移すということだった」

と説明しています。

2013年に東京五輪開催が決まった時から酷暑は予想できたことでした。

しかし、10月に開催された1964年東京五輪当時と違って、現在の五輪は日程の大枠が原則7~8月に決められています

IOCの収入の約8割を放映権料が占めていて、巨額を投じる米国のテレビ局の意向が日程にも色濃く反映されています。

秋は米国のプロスポーツや欧州サッカーなどと競合するため日程がずらせないのです。

そのため、マラソンや競歩の開始時刻を前倒しすることでしのごうとしてきました。

しかし、それでは猛暑の脅威からの抜本的解決に至らないのです。

招致決定から6度目の夏、IOCは「ドーハの悲劇」を突き付けられて初めて直視せざるをえなくなったということです。

東京ではさまざまな暑さ対策を

東京の名所を巡るはずだった「大会の華」のマラソンの会場が移るという異例の措置。

大会関係者は

「IOCは『パンドラの箱』を開けてしまった。論理的には全ての競技(の会場)を見直せとなる」

と語ります。

炎天下、猛暑の脅威にさらされるのはトライアスロンやビーチバレー、ゴルフも同じであり、場当たり的な対応は許されなくなったのです。

遅すぎた判断のしわ寄せは組織委、自治体に…。

開幕まで300日を切る中、判断遅れのつけは、運営を担う組織委や各自治体が背負うことになります。

東京でのマラソン開催の準備費用について、政府関係者は

「人が走らなければ意味がない。無駄金になった」

と顔をしかめているのです。

東京都は暑さ対策として、道路の表面に日光を反射する塗料を塗って温度を抑える「遮熱性舗装」

保水効果が高く水の蒸発時に熱を逃がす「保水性舗装」

以上のふたつをマラソンや競歩のコースで進めてきました。

約136キロを整備する予定で昨年度末までに約129キロを整備しているのです。


道路の街路樹が大きく育つように剪定(せんてい)して木陰を作る取り組みも進めていて、ある都幹部は

「もくろみが外れた印象だ」

と戸惑いを隠さないでいます。

現時点では、札幌への変更は本決まりです。

これから、コース選定や警備計画の策定、ボランティアや役員、警備の人員確保が振り出しに戻るのです。

東京五輪まで10ヵ月を切った中で、まさにゼロからの出発を強いられることになります。

警察など関係団体との調整が不可欠で、国内主要マラソンの関係者は

「一般的にマラソン開催は準備に3年かかる。10カ月弱での実施は非現実的」

と指摘しています。

ネットの声

「7月24日に開幕すると聞いた時から大多数が一抹の不安を感じてたと思うのだが、なぜ土壇場の今になってジタバタしてるのかね。何とかなるだろうという、正常性バイアスの悪い癖なのか…」

「自然現象を言い出したらキリがない。そもそも日本はそのリスクが大きい国なわけでそこが気になるなら
何の大会も日本でやってはいけないと思う。」

「結局7,8月にオリンピックをしなきゃいけない理由はアメリカの放映権以外ないでしょ。もし、このままだと夏季オリンピックは南半球か、北半球でも緯度の高いところでしかできなくなる。今後経済発展で東南アジア各国やインドでの開催は無理になるでしょ。」

東京五輪関係者はドーハが恨めしいでしょうね…。

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