退役する74式戦車はどうなる?展示以外でとっておく必要あるの!?

引退の74式戦車“とっておく”必要ある? 日本も始める「装備品の長期保管」 選択を間違えれば“破滅”の恐れ

防衛省は2024年12月27日に発表した令和(2025)年度予算案に、「予備装備品の維持」費として約7億円を計上しました。

長期保管する3つの「まだ使えるモノ」

これは部隊の改編などで不要となった防衛装備品のうち、「まだ能力を発揮し得る」ものを長期保管しておき、有事の際の予備戦力に充てるというものです。

劣化を防ぐ処理を施したうえで防衛装備品を長期保管しておく、いわゆる「モスボール」は一般的に行われており、その手法を日本でも取り入れること自体はよいことでしょう。

ただ、保管する防衛装備品の選択を間違うと、大して戦力の強化に寄与しないどころか、限られた予算を圧迫して弱体化を招いてしまうおそれさえあるとも思います。

防衛省は令和7年度から維持を開始する防衛装備品として、90式戦車と多連装ロケットシステム自走発射器(MLRS)、74式戦車の3つを挙げています。

90式戦車は実用化から30年以上経過していますが、旧ソ連の戦車部隊と北海道でガチンコ勝負をする想定で開発された戦車のため、搭載している電子装備品の一部は若干旧式化したとはいえ、攻撃力、防御力、機動力のいずれの面とも陳腐化したとは言い難く、長期保管しておく価値は十分にあると思います。

MLRSは長射程ロケット弾の自走発射装置です。2009年に日本がクラスター弾の保有や使用を禁止する条約を批准したため、発射したロケット弾から大量の小弾を広範囲にばらまくという当初想定していた使用方法は出来なくなりましたが、陸上自衛隊はクラスター弾の代わりにGPS誘導ロケット弾「ATACMS」を導入していますので、今後も使い道は十分にあると思います。

90式戦車とMLRSには経費を投じて保管しておく価値があると思いますが、74式戦車にその価値はないと、思われます。

古すぎる? 74式戦車は現代に役立つのか

74式戦車は1960年代に開発された、「戦後第2世代」に分類される戦車です。2024年3月に全車が退役となったのも記憶に新しいところです。

戦後第2世代戦車は、開発中に実用化された対戦車ミサイルの攻撃を回避するため、装甲防御力を犠牲にして機動性を高めていました。

当時の対戦車ミサイルは速度も遅く、着弾まで人間がケーブルを使って誘導する有線誘導式が主流だったので、ある程度機動性が高ければ、そのような戦い方もできたのかもしれません。

しかし現在の対戦車ミサイルは速度も向上し、発射後に誘導を必要としない「撃ちっぱなし」能力を持つものが主流になっています。

これは電子装置の高性能化によるところが大きいのですが、同様の理由で戦車の射撃統制装置の能力も向上し、自ずと砲の命中精度も向上しています。

このため戦後第2世代戦車の開発時に想定されていた戦い方は、ほぼできなくなっています。

74式戦車と同世代に分類されるドイツのレオパルト1などは、増加装甲の装着や射撃統制装置の更新などで防御力と攻撃力が強化されて使い続けられています。

しかし74式戦車は、生産中に防御力を向上するための改良は施されているものの、現役を続けるレオパルト1のような大規模な改修は行われていません。

また、74式戦車は自ら赤外線光を放って夜間の視界を確保する「アクティブ」式の暗視装置を搭載していますが、現在の諸外国の軍隊が保有する暗視装置は、自ら光を発せずに視界を確保する「パッシブ」式が主流です。

74式戦車が夜間戦闘のために暗視装置を起動すれば、それは敵の恰好の標的になるだけです。

2000年代初頭のように、陸上自衛隊の主要な対処目標が機関銃などの軽火器しか持たないゲリラやコマンド部隊であれば、そのままの74式戦車を予備戦力として保管しておくことにも価値があったのかもしれません。

しかし現在の陸上自衛隊には、近代的な装備を持つ正規軍を相手にする能力が求められています。

それは「死んでこい」同然?

仮に有事の際、戦闘で失われた10式戦車の代わりに、保管しておいた74式戦車を渡し、これに乗って正規軍と戦えと言うのは、ただ「死んでこい」と言うのも同然です。筆者には到底看過できません。

アメリカのGAO(会計検査院)は2024年12月17日に老朽化したタイコンデロガ級巡洋艦10隻の近代化改修に費やした予算で、最新型のアーレイ・バーク級駆逐艦が2隻購入できたはずで、老朽化した装備品の近代化改修や保管に固執することは、艦隊の破滅につながる、との政府報告書を発表しています。

戦車が保管されていることによる心理的安心感だけを求めるのであれば、74式戦車を保管しておくことにも意味はあるのでしょう。

しかし、純粋に陸上自衛隊を強くしたい、有事の際の継戦能力を高めたいのであれば、求められるのはGAOのような冷徹な視点の分析と、それに基づく判断なのではないかと筆者は思います。

ネットの声

「最前線でMBTのような使い方をすればかなりの損害が予想される。
しかし後方から砲の仰角を取り榴弾砲のような使い方や、低脅威の目標限定や後方警備などには使える。
ウクライナ戦争のようにドローンが飛び交う戦場なら、砲塔を取っ払い対空砲を乗せて即席の自走対空砲に改造できる。
決死の覚悟での最前線への投入は否定しないが、有れば有るでそれなりの使い方はある。」

「ウクライナ攻防戦を現代版戦闘と言うなら「ドローン戦闘」でしょう。その中でも無線誘導が「ジャミング攻防」で追跡不能?墜落に至っています。その対応手段としての「有線攻撃」も有効でしょう。時代と供に戦闘方法が変わっています。今現在の戦闘方法も変わるでしょうから、即座に現在の装備品が…は如何でしょう。過去の兵器でも応用可能範囲は必然的に生じます。問題は「戦闘開始後に生産」は大きな課題です。数量も含め「応用可能範囲」の即対応は大きなメリットも存在します。「モスボール保存」は必要です。」

「対ドローンに自走高射機関砲(ガンタンク)が有効であるとの報告がある。
ご存知のように87式自走高射機関砲(スカイシューター)の自走部は74式である。
戦術の時代的な変遷により、時代遅れと考えられていた装備が有効であると再認識された例であるが、74式戦車としての保管以外の用途も考慮すべきであろう。」

おすすめの記事