
「100日後に死ぬワニ」から考えたい「電通案件」と2015年過労自殺事件…。
100日後に死ぬワニの大ヒット
きくちゆうきさんがTwitterに100日間、毎日上げ続けたワニを主人公にしたマンガ「100日後に死ぬワニ」は大きな話題になっています。
「100日後に死ぬワニ」
100日目 pic.twitter.com/r0Idn9I7mR— きくちゆうき (@yuukikikuchi) March 20, 2020
「100日後に死ぬワニ」は3月20日のワニの死の配信を最後にして、100日間続いたマンガも幕を閉じました。
マンガは100日後に死んでしまうことを知らないワニの何気なく進む日常を描いています。
そこからは多くの人が命の大切さや周囲との関係性の大切さ、日々の生活の貴重さを感じ取っていたように思います。
だからこそ、Twitter上にとどまらず、書籍化や映画化に発展するくらいの大ヒットとなったのでしょう。
電通案件だった…
漫画家でイラストレーターのきくちゆうきさんが手がけ、インターネット上で話題となっていた日めくり4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が書籍化、映画化されることが分かった。新設された「100日後に死ぬワニ」公式ツイッターで発表された。書籍は4月8日に発売される。
出典:「100日後に死ぬワニ」書籍化&映画化決定!!21日から追悼ショップも
その一方で、ワニの死からすぐに映画化や書籍化、グッズ販売の企画が始まっています。
そこに(株)電通が関わっていることも同時に話題となっているのです。
#100日後に死ぬワニ なんか異様に盛り上がってると思ったらガッツリ #電通 案件でなるほどと思った。100日後に分かる電通、闇の秘密結社以上にしれっと潜んでるから恐ろしいぜ広告代理店。 pic.twitter.com/lW2o6W25I2
— ほげほげ (@hogehoge_maru) March 20, 2020
多くのフォロワーがこの事実を知って、落胆したり悲観することとなりました。
これが「電通案件」でなかったら、そこまで落胆することもなかったのかもしれません。
電通の過労自殺事件
(株)電通過労自殺事件とは何なのか。
それは、電通と聞くと「過労自殺事件」を思い出してしまうからです。
社員一人守れなかったのに、「死」を題材にしていることに嫌悪感を持つ人が多かったのです。
作品自体が素晴らしいものだっただけに、多くの人が落胆する気持ちは察するにあまりあるものがあったのです。
もう一度、2015年に起こった電通社員の高橋まつりさんの過労自殺を思い出してみましょう。
高橋まつりさんは2015年12月25日のクリスマスに自ら命を絶ちます。
高橋さんの残業時間は認定されただけで、月に100時間を超えていました。
過労死ラインを超える働き方が常態化していたのです。
当時、高橋さんの過労自殺を受けて、2017年1月に石井直社長は引責辞任をしました。
電通本体も労働基準法違反の罪で起訴されています。
同年10月には電通に罰金刑も言い渡されたのですが、わずか50万円という判決に多くの人々が憤りを持ってニュースを受け止めたのです。
電通に入社後、月100時間を超える残業をしながら、懸命に働いていた高橋さんの日常は過去の本人Twitterからも理解できます。
1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな。
— まつり (@matsuririri) December 17, 2015
当時のTwitterからは長時間労働に苦しみ、上司らからのパワハラやセクハラも常態化している様相が伝わってきます。
高橋さんのTwitterアカウントは現在も残されているので、誰でも見ることができます。
そして、私たち社会に多くの示唆に富む教訓を与えてくれているのです。
二度とこのような若者の命を奪う企業を野放しにしてはいけないのだということですね…。
無くならない労働者軽視の現状
実は1991年にも電通は新人男性社員を過労とパワハラによって、自殺に追い込んでいます。
一度だけではないのですね。
当時もこのようなことは二度と起こしてはならないと言われていました。
しかし再度繰り返させてしまった痛恨の事件だったのです。
その教訓を現在も活かされているのでしょうか。
当事者である電通自体もこの事件を契機に反省し、労働環境を改善すると思われていました。
しかし、2019年9月、残業時間の上限を定める労使協定を違法に延長させていたことなどを理由として、労働基準監督署から是正勧告を受けているのです。
相変わらずの労働者の軽視ぶりは目に余るところです。
もう一度、同様の事件が起こりかねないのではないか、と危機感を覚る人も少なくないでしょう。
高橋まつりさんのご遺族である高橋幸美さんは娘の死を受けて、全ての労働者が同じ思いをしないように懸命に活動を続けています。
終わった
まつり
ごめんね
かたきうちできなかった
何も変わらなかった #電通
司法も国も
働く人の意識も
雇用契約書にサインしたら
死ぬまで働くんだ
社員より利益
国も法律も守ってくれない
これが日本の姿だ#高橋まつり https://t.co/O96wAshSYo— 高橋 幸美 (@yuki843003) July 28, 2018
作品に罪はない
「100日後に死ぬワニ」という作品に罪はありません。
何気ない日常を切り取った良い作品でした。
そのため、刻々と迫り来る期限に胸が締め付けられる日々が続きます。
誰もが、最後の日を固唾を飲んで見守ったことでしょう。
それだけに、反省が全く足りない企業である「電通案件」だったことに落胆してしまったのです。
映画や書籍、スタンプなど商魂のたくましさに辟易した人もいるかもしれません。
漫画家もプロですから、利益を追求することは大切です。
しかし、なんとなく「死」というものを軽く考えてしまっているような気がしますね。
いきものがかりの歌は余韻にひたれますよ。しかし、これも電通案件なのかも…