イシュタムの手 法医学教授・上杉永久子 小松亜由美 (著) 小学館 (2024/7/5) 781円

現役解剖技官が描く、リアル法医学ミステリ

大学受験に失敗し、東京の実家を出て秋田医科大学に進学した南雲瞬平。

ある出来事をきっかけに、大学卒業後は博士課程に進み、法医学教室に所属している。

秋田県内で発見された異状死体の法医解剖は全てここで行われる。

上司の上杉永久子教授は自殺研究の第一人者だ。

抜群の解剖技術と観察眼を持ち、死者と死者を見送る者への敬意を尊重する一方、その想いが先走り、周囲を振り回すこともたびたびだった。

年末、運び込まれてきたのは二体の焼死体だった。

高齢で寝たきりの妻とその夫とみられる。

無理心中事案と思われていたが、上杉は両者の臓器に似たようなポリープがあることに着目、警察にある指示を出した。

これにより、意外な事実が明らかになり――。

一家の食中毒事案、生後二か月の乳児の死亡事案、夏祭りでの毒物混入事案、そして、南雲の過去に起きたある人物の死にまつわる衝撃的な出来事。

常識に縛られない上杉と、執刀医を目指す南雲のコンビが事件の真相に迫る。

現役解剖技官が描く、司法解剖のリアル。そして、自然豊かな秋田の風物や風景。

圧倒的な描写力で、私たちの隣にある「死」について深く考えさせられる、新たな領域に踏み込む法医学ミステリ。

著者の小松亜由美さんは、現役の解剖技官にしてミステリマニア。

解剖シーンのリアルさは右に出るものなしです。

出身地である秋田県の方言やご当地ものの、ユニークな描写も秀逸。

唯一無二の法医学ミステリ、ぜひお楽しみください。


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