高齢者は社会のお荷物ではない…30年前とは違うよ

「老人は社会のお荷物」は本当?30年前の高齢者と今の高齢者はまったく違う

コロナ禍の陰で、日本に今、“超高齢化”という新たなクライシスが迫っています。

2025年には、約800万人いる団塊の世代が75歳の後期高齢者となり、歴史上前例のない高齢化社会が訪れようとしているのです。

果たしてそこに希望はあるのでしょうか…。

「高齢者は社会のお荷物」は、本当にそうなのか?

[超高齢化]の危機 超高齢化社会を検証する上で、高齢者の健康状態を知ることも大切。

老年学を専門とする鈴木隆雄氏は、「30年前の高齢者と今の高齢者はまったく違う」と指摘します。

「経済的な安定や栄養の改善、教育や情報共有によるヘルスリテラシーの向上。これらの要因により、30年前より10歳は若返っています。これは歩行速度や握力などの研究によるエビデンスがあります。高齢者というと肉体的な老いが注目されがちですが、実は真っ先に衰えるのは社会性。特に男性は、女性よりも横の繋がりが苦手で、働かなくなって社会との接点を失うと老いが加速します」

認知機能は?

また、認知機能について認知科学者の川合伸幸氏が解説。

「前頭葉の機能低下で、思い通りに体を動かせなくなったり、感情を抑制できなくなっていく傾向は見られます。これは、昨今話題になるペダルの踏み間違いによる交通事故などにも顕著。一方、語彙力や幸福感は年齢とともに高まっていくことも知られています。高齢者による暴力が社会問題化していますが、実際は高齢者自体の数が増えたこと、ニュースで取り上げられて目につくようになったことなどの要因もあり、一概に“凶暴”とは言えません。また、そもそもの認知機能も、過去に比べると若返る傾向にあります」

65~74歳は十分に活躍できる

イメージではなくファクトベースで見た場合、75歳を過ぎた後期高齢者では明らかに各種数値が衰えるものの、65~74歳の前期高齢者は、社会のリソースとして十分に活躍できると鈴木氏。

「30%が高齢者でも、そのうちの半数が働けるのであれば、支える側の分母が大きくなります。高齢社会白書によれば、前期高齢者の8割は健康が許す限り働きたいと願っている。その折角のリソースをお荷物扱いして社会から疎外すれば、ますます老いに拍車をかけ、多大な損失となります」

川合氏も同意見です。

「社会との繋がりが強いほど、健康状態がよく、死亡率も低くなることは、多くの研究結果で示されています。免許の実技講習など必要な制度を整えつつ、社会の一員として必要以上に老人扱いしないことが、現役世代にとっても明るい未来に繋がるはずです」



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