HONDA CB50|ゼロハンの概念を覆した「最小の本格派」

ホンダが1971年に世に送り出した「ベンリイ CB50」は、50ccクラスという原動機付自転車の枠組みの中にありながら、その作り込みは当時の大型バイクにも引けを取らない、まさに「最小のスーパースポーツ」と呼ぶにふさわしい一台でした。

当時、50ccクラスのスポーツモデルといえば、スーパーカブ譲りの横型エンジンを搭載した「ベンリイ SS50」などが主流でしたが、ホンダはこのCB50において、全く新しい設計思想を導入しました。

それは、高回転・高出力を実現するための「縦型エンジン」の採用と、本格的なダイヤモンドフレームの構築であり、この構成は後にエイプ(Ape)やXR50モタードといった名車たちへと引き継がれるホンダ・ミニ縦型の原点となったのです。

1971年の誕生から、ディスクブレーキを採用したCB50JX(1973年)、外装を刷新したCB50JX-1(1976年)、そして最終型となる油圧ディスクブレーキ装備のCB50S(1980年)まで、約10年以上にわたりゼロハン界のトップランナーとして君臨し続けました。

最終モデルが1982年頃に生産を終了してから40年以上が経過した現在でも、その凛とした佇まいと、4ストロークならではのメカニカルな魅力に惹かれるファンは絶えません。

2026年現在の旧車市場においても、CB50は「自分で弄って、回して楽しむ」ことができる最高の教材であり、趣味のバイクとして非常に高い人気を維持しています。

当時の若者たちが、2ストロークエンジンの圧倒的な加速に対抗するために、4ストロークのCB50をいかに高回転まで絞り出して走らせたかというエピソードは、日本のモーターサイクル史における熱い一ページです。

本記事では、この伝説的なゼロハンスポーツ「HONDA CB50」の歴史からメカニズム、そして実際に所有した際のインプレッションまで、その魅力を4,000文字を超える圧倒的な情報量で余すことなく解説していきます。

かつての少年たちが憧れ、今の熟練ライダーが再び手にするこの名車の真髄を、余すところなくお届けします。

 

どんなバイク?

HONDA CB50を語る上で欠かせないのが、その心臓部である「縦型エンジン」の存在と、そこに込められたホンダのエンジニアリングへの執念です。

空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンは、最高出力6.0psを10,500rpmという、当時の原付としては異例の超高回転域で発生させる特性を持っていました。

このエンジンは「世界最小のSOHCエンジン」とも称され、ボア42.0mm×ストローク35.6mmという超ショートストローク設計により、アクセル操作に対してタコメーターの針が跳ね上がるような鋭いレスポンスを実現していました。

当時の50ccクラスは、ヤマハのRD50やスズキのRG50といった強力な2ストローク勢が全盛期を迎えており、単純な加速性能や馬力では4ストロークが不利とされていた時代です。

しかし、ホンダはあえてメンテナンス性や耐久性、そして精密なメカニズムを楽しめる4ストロークでのスーパースポーツを追求しました。

カムシャフトをシリンダーヘッドに配置するSOHC機構は、高回転域での正確なバルブ駆動を可能にし、4ストローク特有の「回せば回すほど伸びる」エンジンフィールを生み出しました。

車体構成に目を向けると、クラス初となる本格的なダイヤモンドフレームを採用し、前後17インチの大型ホイールを装備することで、原付とは思えない安定したハンドリングを手に入れていました。

このダイヤモンドフレームは、エンジンを強度部材として活用する設計で、当時の小排気量車としては極めて剛性が高く、スポーツ走行時のヨレを最小限に抑えていました。

また、CB50は単なる移動手段としての原付ではなく、ライダーが「所有する喜び」を感じられるよう、クロームメッキのフェンダーや端正なタンクデザイン、そして視認性の高い二眼メーターなど、大型バイク並みの質感を備えていました。

初期モデルからタコメーターを標準装備していたことも、当時の若者たちの心を掴んだ大きな要因であり、その精密な動きこそがCB50のアイデンティティとなっていました。

ホンダが持てる技術を注ぎ込んで開発したこのマシンは、まさに「ホンダ・レーシング」の血統を感じさせる、ゼロハン界の至宝と言えるでしょう。

それでは、実際にCB50がどのようなサウンドを奏で、歴史を刻んできたのか、貴重な映像を確認してみましょう。

HONDA CB50のインプレッション

実際にCB50のシートに跨がると、そのスリムな車体に驚かされますが、ライディングポジションは驚くほど本格的なスポーツスタイルです。

足つき性については、スリムなシート形状と相まって、小柄なライダーであっても両足がベタ付きになるほどの安心感があります。

しかし、一度走り出せばその性格は一変し、ライダーに対して常に「ベストなギア選択」と「積極的な操作」を要求してくるスパルタンな一面を見せます。

低回転域のトルクは、現代のインジェクション車に慣れた感覚からすると極めて細く、発進時はクラッチとスロットルの連携に細心の注意が必要です。

しかし、その難しさこそが「マニュアル車を操る醍醐味」であり、一度コツを掴めばこれほど楽しいバイクはありません。

パワーバンドに入る8,000rpmを超えると、エンジンは一気に活気づき、10,000rpmからレッドゾーンに向けて突き抜けるような加速感を見せます。

この時の排気音は、単気筒特有のパルス感がありながらも、高回転域ではマルチエンジンを彷彿とさせる澄んだ旋律を奏でます。

17インチの大径ホイールは、路面状況の悪いワインディングでも高い安定感を発揮し、ライダーが狙ったラインを正確にトレースすることを可能にしています。

フロントブレーキには、中期モデル以降に機械式ディスクブレーキが採用されていますが、この操作感もまた独特です。

ワイヤー引きのため、現代の油圧式のような強力な制動力はありませんが、指先で入力をコントロールする楽しさがあり、スピードを維持したままコーナーへ飛び込む際の絶好の相棒となります。

最終モデルのCB50Sではついに油圧式ディスクブレーキが採用され、より現代的なストッピングパワーと信頼性を手にしました。

CB50を走らせることは、単なる移動ではなく、機械との対話そのものであり、五感をフルに使ってスポーツする喜びを再確認させてくれます。

こちらの動画では、走行中のより詳細なフィーリングや、高回転域でのエンジンサウンドの魅力を堪能いただけます。

HONDA CB50のスペック

HONDA CB50の驚異的なメカニズムを数値から紐解いてみましょう。ここでは、技術的な完成度が極まった最終型CB50Sのデータを中心にまとめました。

項目 内容
型式 AC02 (CB50S)
全長 1,790 mm
全幅 665 mm
全高 950 mm
軸距 (ホイールベース) 1,180 mm
最低地上高 150 mm
シート高 730 mm
乾燥重量 75 kg
車両重量 82 kg
乗車定員 1名
燃費 (30km/h定地走行) 78.0 km/L
最小回転半径 1.8 m
エンジン型式 AC02E・空冷4ストロークSOHC単気筒
総排気量 49 cc
内径×行程 (ボア・ストローク) 42.0 × 35.6 mm
圧縮比 9.5
最高出力 6.3 ps / 10,500 rpm
最大トルク 0.43 kg-m / 9,500 rpm
燃料タンク容量 8.5 L
燃料供給方式 キャブレター
変速機形式 常時噛合式5段リターン
タイヤサイズ (前) 2.50-17
タイヤサイズ (後) 2.75-17
フロントブレーキ 油圧式シングルディスク
リアブレーキ 機械式ドラムブレーキ

みんなのインプレッション

CB50を所有し、共に過ごしてきたオーナーたちの言葉には、スペック表だけでは語れない深い愛情と喜びが詰まっています。

『とにかくエンジンを回すのが楽しい。1万回転を超えた時の高揚感は今のバイクにはない特別なもの。』

『エイプやXR50のパーツが流用できるのが強み。40年前のバイクとは思えないほど元気に維持できている。』

『低速トルクはないが、それをギアを細かく繋いで走るのがマニュアル車を操る本当の楽しさだと教わった。』

『17インチの大径ホイールは直進安定性が抜群。原付ツーリングでも疲れにくく、どこまでも行けそうな気がする。』

『機械式のディスクブレーキは今のバイクに比べれば効かないが、そのルーズな感触さえも愛おしく感じる。』

『当時の4ストで2ストに勝とうとしたホンダの気合を随所に感じる。メカニズムを見るだけで酒が飲める。』

『スリムなロングタンクとシートカウルの流れるようなデザインは、今のバイクにはない美しさがある。』

『電装系の6Vは確かに弱いが、それを12V化するレストアのプロセスもこのバイクを楽しむ重要な要素。』

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