「俳優」の肩ごしに 山﨑努 (著) 日経BP 日本経済新聞出版 (2022/11/19) 1,650円

日本を代表する演技派俳優が来し方を振り返り、即興風に綴った初の自伝!

――実人生と俳優業の原理は似ている。そこがおもしろい――

8月の日経新聞朝刊の看板連載「私の履歴書」に登場し、大きな反響を呼んだ山﨑努さん初の自伝が早くも待望の書籍化です。

連載では掲載しなかった章も多数収録、滋味深き文章にさらに磨きがかかった作品に仕上がっています。

3、4歳の頃、染物職人の父におぶわれて散歩に連れて行ってもらった松戸の川べり。

父の肩ごしから見ていた、赤い襦袢をまとった〝狂人〟への畏怖が、自分の俳優業の原点ではないかと書く少年時代。

そこから上野の映画館でマーロン・ブランドを観て俳優を志す高校時代までは、なぜ自分がのちに俳優になったか、その原点を当時の思いもよらなかった行動から掘り起こしていきます。

そして俳優座養成所から文学座へ。

黒澤明監督の『天国と地獄』の誘拐犯人役にオーディションで選ばれてからは、映画、舞台、テレビドラマで、演技派俳優となっていく半生を、俳優・山﨑努の肩ごしから見つめて紡いでいきます。

登場する人物は芥川比呂志、岸田今日子など新劇の人たち。

森繁久彌、三船敏郎といった映画界の人たち。

現代テレビドラマの最高傑作のひとつ「早春スケッチブック」の脚本家・山田太一、寺山修司、和田勉。さらに山﨑さんの主役が欠かせなかった映画「お葬式」「タンポポ」「マルサの女」の監督・伊丹十三。

日本の俳優の演技に違和感を持ち続けたゆえに親友となった英国の俳優・演出家テレンス・ナップ……最後は円環を描くような余韻深きラストシーンが待っています。

【目次】
山﨑の努/川の匂い/父の肩ごしに/女先生/空襲警報/ハダシの疾走/父の死/メジロ/新聞、牛乳、ラッキョウ/納豆、勝手口/コッペパン/ぶらぶらだらだら/俳優志願/俳優養成所/どんぶらこ/おもしろいねえ/たかが芝居/映画出演/ヘタとダイコン/黒メガネ/やけど/丸太ん棒/劇団「雲」/もやもや/自分の演技を/出産、キス/一人になって/演出家と/ヒー・イズ・マイ・フレンド/黒は白く/物忘れ、好きな役/なんという男だ/名なしの男/エンリコ/舞台に立つこと/理想の演技/パニック/最後の舞台/老い……など

「日常の一コマかもしれないですが、とにかく文章が好きです。テレビでしか拝見したことはないですが、あの味のある演技は人柄が出ていたんだなと思いました。」

「日経新聞の連載をまとめたので、1項目がすこぶる短い。しかし文章がじっくりしているので、ゆっくり読んで味わう。本書はゆっくり話す感じで読むほうがよい。もちろん脳内で努さんの声を再生しながらの黙読だ。1文のあとに短いひと言がついてるの、とてもいい。洒脱。文章のプロでない著者による名随筆爆誕。」

「山﨑努さんというと、『タンポポ』『マルサの女』などの映画やドラマの印象が強い。
しかし、山﨑さんの出身は演劇・舞台。しかもその熱量たるやそんじょそこらの俳優の比ではない。
その出自を知ると、なんてすごい人なんだ!とまずは感じると思う。
そして、山﨑さんは、俳優という仕事を人生と同じように見ているようだ。
降ってわいたようにこの世に生を受けた人生。
俳優の役というものも、自分で選ぶものではなく、どこからともなく与えられるものだという。
そういった俳優と人生の間で産み出される言葉ひとつひとつに、俳優業でもなんでもない人も学ぶところがあると思います。
山﨑努さんという一人の俳優の人生を追体験できる作品です。
ちなみに、本書は山﨑努さんが自ら執筆したものとのことです。
山崎さんの軽快で含蓄のある文章も堪能できる一冊です。」


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事