「ジュリアンは私で、私はジュリアンだった」
作風は優雅にして猥雑、生涯は華麗にしてスキャンダラス。
トルーマン・カポーティ、ゴア・ヴィダル、ノーマン・メイラーと並び称された、アメリカ文学史上に燦然と輝く小説家ジュリアン・バトラー。
その生涯は長きにわたって夥しい謎に包まれていた。
しかし、2017年、覆面作家アンソニー・アンダーソンによる回想録『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』が刊行され、遂にその実像が明らかになる――。
本当の小説を読む愉悦を最高に味わわせてくれる大作ですね。川本直さんの『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』。
重厚で企みに満ちた翻訳文学が好きで未読のかた、アメリカ文学史を知りたい翻訳家志望者も、この機にぜひぜひ読みましょう??(虚実ないまぜなので気をつけて) pic.twitter.com/yBO87pdinX— ????鴻巣友季子(シルヴィア・プラス「ベル・ジャー」翻訳中) (@yukikonosu) February 1, 2022
著者について
川本直(かわもと・なお)
1980年東京都生まれ。デビュー小説『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(2021年)で第73回読売文学賞(小説賞)、第9回鮭児文学賞を受賞。他著書に『「男の娘」たち』、共編著に『吉田健一ふたたび』。
「これほど王道の小説に出会うことは稀だ。
仕掛けばかりに目を取られているレビューが多いようだが、描写を節約し、叙述によって繰り広げられる疾風怒濤のストーリーテリングで20世紀のアメリカを同性愛者の視点から描く第一級のフィクションである。」「本作は、全体的に現在の米国において勢力を伸ばしつつある超保守を体現するピューリタニズム(あるいは福音主義)に物申す立場から、自由な気風を愛することの価値を示してくれる。ジュリアンの、あるいは作者の「差別のない社会であれ」という願いが込められた作品なのではないかと思う。」
「読み終わっての第一声「日本語学習者の文章みたいだな……」。
海外の文献を翻訳したという体なのであえてそうしてるのかなとも思ったが、訳者の語りにしても、ジュリアン・バトラーの作品として紹介される小説の文章にしても表現として生硬で、ワンパターンなのがきつい。明らかに同じ人間が書いたのだと読み取れる(かつ、文体から引きこもり的な陰湿さを感じる)。」
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