メイドの手帖 ステファニー・ランド(著),村井理子(翻訳) 双葉社 (2020/7/15)

最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語。

シングルマザーの著者が子供を育てつつ最低賃金のメイド(清掃員)として働き、

貧困、社会の偏見、DVを振るう元パートナーや経済的自立を阻む恋人、

それら全てが低下させる自己肯定感に苛まれながらも、

作家になる夢と自らの解放を叶えていく様子を描いた自伝的作品。

発売早々全米ベストセラー。

オバマ前大統領の2019年推薦図書にも選出。

NETFLIXで映像化決定。

渡辺由佳里(エッセイスト、洋書書評家、翻訳家)

私たちは見くびっている。貧困を、清掃の仕事を、ひとり親の苦難を、そして夢を持つことの尊さを。

いま世界は「賢く立ち回れば負のループから抜け出せる(抜け出せないのは賢くないから)」という嘘の神話に支配されている。それとステファニーの死闘の一部始終は、まったく相反するものである。彼女の半生を知ることで見えてくるのは、制度の不合理と世間の理不尽に襲われてひとたまりもない、無数の声無き者たちの存在だ。

夢を糧にぎりぎりの福祉と自助で困難を乗り越えたステファニーの物語は、嘘の神話の世界から人々を引き戻し、隠された問題について考える力をもたらしてくれる。そうして私たちはきっと、少しずつ変わることができるのだろう。


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