最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語。
シングルマザーの著者が子供を育てつつ最低賃金のメイド(清掃員)として働き、
貧困、社会の偏見、DVを振るう元パートナーや経済的自立を阻む恋人、
それら全てが低下させる自己肯定感に苛まれながらも、
作家になる夢と自らの解放を叶えていく様子を描いた自伝的作品。
発売早々全米ベストセラー。
オバマ前大統領の2019年推薦図書にも選出。
NETFLIXで映像化決定。
渡辺由佳里(エッセイスト、洋書書評家、翻訳家)
私たちは見くびっている。貧困を、清掃の仕事を、ひとり親の苦難を、そして夢を持つことの尊さを。
いま世界は「賢く立ち回れば負のループから抜け出せる(抜け出せないのは賢くないから)」という嘘の神話に支配されている。それとステファニーの死闘の一部始終は、まったく相反するものである。彼女の半生を知ることで見えてくるのは、制度の不合理と世間の理不尽に襲われてひとたまりもない、無数の声無き者たちの存在だ。
夢を糧にぎりぎりの福祉と自助で困難を乗り越えたステファニーの物語は、嘘の神話の世界から人々を引き戻し、隠された問題について考える力をもたらしてくれる。そうして私たちはきっと、少しずつ変わることができるのだろう。