大鞠家殺人事件 芦辺拓 (著) 東京創元社 (2025/1/30) 1,320円

昭和18年、大阪・船場。

陸軍少将の娘は商家の長男に嫁いだ。

吊るされた男、池に突き立った日本刀、酒樽の死体。

一族を襲う惨劇は衝撃の終幕を迎える――

正統派本格の歴史に新たな頁を加える傑作

第75回日本推理作家協会賞/第22回本格ミステリ大賞 受賞作

大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場。

戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁いだ陸軍少将の娘、中久世美禰子。

だが夫は軍医として出征し、一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。

やがて当主の死を皮切りに、相次ぐ惨劇が一族を襲うが……本格推理の真髄を突く、第75回日本推理作家協会賞、第22回本格ミステリ大賞受賞作。

著者あとがき=芦辺拓/解説=杉江松恋

著者について
芦辺 拓
1958年大阪府生まれ。同志社大学卒。86年「異類五種」で第2回幻想文学新人賞に佳作入選。90年『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。2022年『大鞠家殺人事件』で第75回日本推理作家協会賞および第22回本格ミステリ大賞を受賞。著作として『綺想宮殺人事件』『スチームオペラ』『奇譚を売る店』『異次元の館の殺人』『ダブル・ミステリ』『名探偵は誰だ』『乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび』など多数。

「べたべたの船馬言葉を読んだ時脳裏に鳴り響いたのは故3代目笑福亭仁鶴の声でした。そして仁鶴師匠も出演したはった「けったいな人々」という茂木草介のドラマを思い出して、懐かしいなあと思いましたら、設定で「けったいな人々」へのオマージュが出てきて、ああやっぱり大阪商人世界というならそれやわなぁと。その上クラシックな探偵小説をご存じな方にはピンとくる、知らなくてもそのカラクリに納得する展開が最後まで心地よい小説でした。娯楽の原点に触れて満足しました。」

「「大鞠家殺人事件」(芦辺拓 東京創元社)を読み終えました。
舞台は、大阪、船場。昭和を知る人間にとっては、或る高名なテレビ番組を真っ先に思い浮かべます。
明治三十九年、パノラマ館のエピソードが大正三年の「大鞠家」の祝言を経て、昭和十八年からの「連続殺人事件」へと繋がります。本格パズラーですから、これ以上語ることができません。語り出すと止まらなくなる内容が多く含まれているため、自戒しましょう。じっくりとお読みください。
戦中、戦後を生き抜いた「大鞠家」のクロニクル。特筆すべきは、徴兵によって男たち不在の<大阪>を生きる女たちが思いのほか悲しみをもって語られ、就中、数多あったであろう「薬問屋」の生業とそこを生きる<番頭はんと丁稚どん>たちの今では特異な世界が(ユーモアをたたえながら)丁寧に描かれ、郷愁を、切なさをもたらします。それは、サウダージと言っていいのかもしれません。
傑作パズラーだと思います。」

「古典名作ミステリーの名前や一文がたびたび登場するので、おっ、と楽しめるかと思います。戦前大阪の空気感や教科書では語られない戦中の庶民の暮らしなども知識欲が満たされます。それがかえってミステリ要素の邪魔をするというかミステリ要素が邪魔になるというか…。記憶に残るような伏線もなく唐突に現れる物事や人物が多く、「えっ、誰?」となることもしばしばです。焦点は殺人事件より大戦末期の大阪の風俗や人々の息づかいにあると感じました。
読んでいてまざまざと映像が浮かび上がる文章や、未来から過去へ、過去から少し先の未来へと移り変わる転換も楽しく、ミステリに重きをおかなければ買って損はない作品です。」


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