「夢の田舎暮らし」を求めて父が突然会社を辞めた。
いじめにあい登校できなくなった小学五年生の雪乃は、父とともに曾祖父母が住む長野で暮らし始める。
仕事を諦めたくない母は東京に残ることになった。
胸いっぱいに苦しさを抱えていても、雪乃は思いを吐き出すことができない。
そんな雪乃の凍った心を溶かしてくれたのは、長野の大自然、地元の人々、同級生大輝との出会いだった―。
ほんとうの自分を受け容れてくれる場所。
そこを見つけるため、今いる場所に別れを告げるのは、決して逃げではない。
居場所探しの物語。
【著者からのコメント】
「自分探し」の記憶はあまりありませんが、「居場所探し」はつい最近までくり返してきた気がします。心安らげる居場所がないのは不安なことです。
つい、間違ったものにしがみつきたくなってしまう。
ここにいていいのだと信じられる場所、ほんとうの自分を受け容れてもらえる場所さえ
見つかったなら、誰もがもっと生きやすくなるし、自信を持てるしひとに優しくなれるんじゃないか。
そうした場所を見つけようとして今までいた場所に別れを告げるのは、決して〈逃げ〉ではないんじゃないか──。
今作『雪のなまえ』は、そんな思いをこめてつづりました。
時にすれ違っても、みんながお互いのことを思い合う物語です。
若い人にも、かつて若かった人にも、ぜひ。
「登校拒否の娘が、突然仕事を辞め田舎に帰る父親と一緒に暮らすことによって自分を取り戻していく。
ストーリーとしてはありがちで予想を裏切る展開はないが、それだけに穏やかな気持ちで読める。
学校になじめない子供自身より、その親が読むことで心が少し軽くなる内容かな。
構成としては平凡で予定調和ではあるけど家族の大事さや、周囲の人の愛情のメッセージ。」
|