かつて建築資材などに広く使われていたアスベスト(石綿)。
その細かい繊維を肺に吸い込むことで、長い潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を発症することから、「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。
著者は若い頃、電気工事工として働く中、現場でアスベストを吸い込み、今なお後遺症を抱えている。
その経験をノンフィクションとして、『石の肺―僕のアスベスト履歴書』に書いたが、本書はその小説版と言える。
仙台、ロンドン、東京、尼崎とアスベストの被害に苦しむ人びとの運命を綴った連作小説集。
行政の対応が後手に廻り、結果として弱い個人が犠牲となっていく構図は、コロナ禍にも通じるものがある。
佐伯一麦さんの新刊『アスベストス』(文藝春秋)は、小説としては異例なほどの直接的なタイトル。それだけ強烈なメッセージをこめた短編集です。
アスベストの危険がわかってからも「管理使用」にこだわった日本では被害が拡大しました。
自身がアスベストの被害にあった佐伯さんが警鐘を鳴らします pic.twitter.com/uPSLQx3OuM
— 阿部公彦 ABE Masahiko (@jumping5555) December 13, 2021
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