ケアマネジャーはらはら日記 岸山真理子 (著) フォレスト出版 (2021/7/9)

「いらだちに直面する仕事」

介護支援専門員が向き合う怒り、悲しみ、不安の正体

――人生の最終章を見つめて

本書を読んでもらえればわかると思うが、あらかじめ申しあげておく。

私は優秀なケアマネジャーではない。

書類整備などの実務に追いつけない。

手際が悪く、機転がきかない。

お仕事小説やお仕事ドラマの主人公のようにいつになったら成長するのかとあきれながら、もう70歳も目前に迫ってきた。

本書は、そんな私の極限状態における滑稽さも描いた。

日記形式になっているが、すべて私が実際に体験したことである。

●第1章「感情労働者」より●
「こんなヘボなケアマネ、見たことねえぞ。おまえみたいに能力がないケアマネは、き・え・ろ! 」
私を大声で罵倒したのは78歳でひとり暮らしの男性だ。難病で歩行困難なうえ、半年前に受けた胃がんの手術のあとの痛みが激しく、いつも苛立っていた。
大学病院への通院に付き添ったとき、私が診察後の精算に戸惑ったことで怒りを爆発させた。
「おまえはもうどこかに行け! これ以上、俺に、さ・わ・る・な! 」
ケアマネになって20年、利用者から出入り禁止を食らって、どうにもならなくなった経験が5回ある。自分から断ったことは一度もない。
私たちケアマネは常時、大なり小なり、利用者の怒りにさらされる。ケアマネは、利用者や家族の怒りや不安、悲しみに直面する「感情労働者」だ。

著者について
岸山真理子(きしやま・まりこ)
1953年静岡県生まれ。大学卒業後、30代まで単純労働の現場を渡り歩く。
38歳での出産を機に正規職員の仕事を求め、介護職員に。
その後、47歳でケアマネジャーになり、以来21年にわたって介護現場の最前線で奮闘する。
毎朝のストレッチを欠かさず、真剣に「88歳現役」を見据える。

「岸山さんには亡き母がお世話になりました。母は86歳で腰椎圧迫骨折で初めて介護保険の対照者になり、ずっと在宅で過ごし、94歳、胃の末期癌で最期の前日ターミナル病院に入りました。要介護から要支援に代わってからのケアマネさんが岸山さんでした。いつもスッキリしたお顔でテキパキと書類を書き込んでいた姿からはこんなにハラハラドキドキの毎日を送っているなど想像できませんでした。薦めてくださったデイケアでは新しい話し相手も出来たし、俳句の添削をして下さる利用者さんにも出会えました。高齢になっても楽しみがあることを教えてもらいました。岸山さんが近くの集会所でひばりちゃんの扮装で歌ったのを聞いた時は凄いエネルギーだって、お年寄りを喜ばすのに一生懸命なんだと思いましたよ。
本書を読んで、岸山さんは人と接するのが好きなんだ、このお仕事が天職なんだって分かりました。
こんなケアマネさんがいる事を多くの人に知ってもらいたいですね。」

「久々にエッセイを読んで感動した。介護の仕事に興味があり、手にしてその内容の濃さ、深さに驚いた。作者は、自分の弱さ、短所、悩みや怒りをあからさまに書いていて、その描写が実に生々しくて、思わず引き込まれ、池井戸潤の原作ドラマを見ているような興奮があった。誰もが一度は経験するであろう、会社の方針や上司との衝突、仕打ちに悩み、弱音を吐き、開き直り、もがくその姿が本当にリアルで共感した。
この著者の様に福祉医療を熟知し、人生経験があり、本当の人の痛みを知った人が、弱者、高齢者に限らず、人生相談などの回答者になったらいいのにと勝手に思った。不安になったとき、壁にぶつかったときに、何度でも読み直したい本。
絶対にお勧めです。」

「私は医療関係で働いているので、常に命の重みと向き合っています。ケアマネは直接、利用者さんの身体に接しないデスクワークと考えていたけれど、とんでもない! ケアマネの判断と行動力は人の命に関わることなんだということがよくわかった。相当、責任が重い。著者は心配症だけれど、それでちょうど良い! あまりに楽観的だと命を失うことあるから。心配して不安になって危険予測してもらったほうが利用者さん的には良いんです。はらはらがちょうど良いんです。はらはらしなくなったら終わりますから。はらはらを乗り越えて、やりがいが手に入る。私のような医療従事者や介護従事者にバンバン読んでほしい。」


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事