人面瘡探偵 中山七里(著) 小学館 (2022/2/4) 836円

名探偵は肩にいる!?

不可解連続殺人の謎

三津木六兵には秘密がある。子供の頃に負った右肩の怪我、その傷痕がある日突然しゃべりだしたのだ。

人面瘡という怪異であるそれを三津木は「ジンさん」と呼び、いつしか頼れる友人となっていった。

そして現在、相続鑑定人となった三津木に調査依頼が入る。信州随一の山林王である本城家の当主・蔵之助の死に際し遺産分割協議を行うという。

相続人は尊大な態度の長男・武一郎、享楽主義者の次男・孝次、本城家の良心と目される三男・悦三、知的障害のある息子と出戻ってきた長女・沙夜子の四人。

さらに家政婦の久瑠実、料理人の沢崎、顧問弁護士の柊など一癖ある人々が待ち構える。

家父長制度が色濃く残る本城家で分割協議がすんなり進むはずがない。財産の多くを占める山林に希少な鉱物資源が眠ることが判明した夜、蔵が火事に遭う。

翌日、焼け跡から武一郎夫婦の焼死体が発見された。

さらに孝次は水車小屋で不可解な死を遂げ……。

一連の経緯を追う三津木。

そんな宿主にジンさんは言う。

「俺の趣味にぴったりだ。好きなんだよ、こういう横溝的展開」

さまざまな感情渦巻く本城家で起きる事件の真相とは……!?

解説は金田一俳優でもある片岡鶴太郎氏。

中山 七里
1961年生まれ、岐阜県出身。『さよならドビュッシー』にて第8回「このミステリーがすごい!」大賞で大賞を受賞し、2010年に作家デビュー。著書に、『境界線』『護られなかった者たちへ』『総理にされた男』『連続殺人鬼カエル男』『贖罪の奏鳴曲』『騒がしい楽園』『帝都地下迷宮』『夜がどれほど暗くても』『合唱 岬洋介の帰還』『カインの傲慢』『ヒポクラテスの試練』『毒島刑事最後の事件』『テロリストの家』『隣はシリアルキラー』『銀鈴探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『復讐の協奏曲』ほか多数。

「初めて聞いた職業。軽く始まって、事件はどんどん進む。ラスト一行にびっくり!というのは定番だけれど、
ラスト数行にぞっとさせられる。どんでん返しの七里ここにあり。」

「基本的に中山七里という作家が、どんでん返しに命を懸けるタイプであることはいまさらいうまでもないが、本作は何としたものだろうか。正直この手の話で何のサプライズもないのはちょっといただけない。もし作者が考えたサプライズが「そこじゃなくあのラストでしょ」というのであれば、あんなものはサプライズでもなんでもなく、それこそ「ありきたりのクソ仕掛け」としかいいようがない。いくら多作とはいえ、そのために小説のレベルを落とすのは論外である。長年作者を愛読するものとして一言、苦言を申し上げたい。」

「ミステリーですから、ストーリーの展開には触れません。まして顛末やラストは一切語りません。読者の興味関心を奪ってもいけませんので。筆力のある作家なので読ませる技術は十分なのですが、肝心のストーリーとミステリーの味わいに難があると言わざるをえません。多作の作家の陥りやすいワナなのかもしれません。才能豊かな作家ですが、本作は凡庸なミステリー作品でした。残念ですが。」


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