この20年、心は消滅の危機にさらされている。物が豊かな時代は終わり、リスクだけが豊かな時代がやってきたからだ。
人々は目の前のことでせいいっぱい。心はすぐにかき消されてしまう。
社会にも、身近な人間関係にも、そして自分自身の中にさえも、心というプライベートで、ミクロなものを置いておく余裕がない。
それでも心は見つけ出されなければならない。
自分を大切にするために、そして、大切な誰かを本当の意味で大切にするために。
ならば、心はどこにあるのか? その答えを求めて、臨床心理士は人々の語りに耳を傾けた――。
現れたのは、命がけの社交、過酷な働き方、綺麗すぎる部屋、自撮り写真、段ボール国家、巧妙な仮病など、カラフルな小さい物語たちだった。
『居るのはつらいよ』で第19回大佛次郎論壇賞受賞、紀伊国屋じんぶん大賞をW受賞した気鋭の著者が「心とは何か」という直球の問いに迫る、渾身のエッセイ。
「私たちは複雑な話を、複雑なままに聴き続けたときに、その人の心を感じる。あるいは複雑な事情を複雑なままに理解してもらえたときに、心を理解されたと感じる。表だけではなく、裏まで含めてわかってもらうと、心をわかってもらえたと思える。」(東畑開人『心はどこへ消えた?』文藝春秋、P17) pic.twitter.com/N87QkD5wfu
— 本ノ猪 (@honnoinosisi555) September 6, 2021
「これまでの東畑さんのように、軽妙な語り口で進んでいきますが、導入から「事例」への展開、事例の内容と解説の切り口は鋭いです。 私自身の事例と合わせて、いろいろなことを考えさせられました。」
「『居るのはつらいよ』は間違いなく名著であるが、つまみ食い的に東畑節を堪能できるという意味では、むしろ本書のほうが入門書としては敷居が低いかもしれない。コロナ禍において何かを考えることに疲れてしまった人、社会の動きに置いていかれているような気分になってしまった人、好きな人と好き勝手に語らう時間を待望している人、そんな人に心の底からおすすめしたい一冊である。」
「『野の医者は笑う』『居るのはつらいよ』でも思いましたが、自らのしんどさや傷つきを率直に(でもユーモアも含めつつ)開示できるところが、この著者が共感を呼ぶところなんだろうなと思います。知識人の男性だと珍しいと思うのですが、年代でしょうかね。」
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