クララとお日さま カズオ・イシグロ(著)、土屋政雄(翻訳) 早川書房 (2021/3/2)

ノーベル文学賞 受賞第一作

カズオ・イシグロ最新作、2021年3月2日(火)世界同時発売!

AIロボットと少女との友情を描く感動作。

著者について
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、5歳のとき、海洋学者の父親の仕事でイギリスに渡り、以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育ち、その後英国籍を取得した。ケント大学で英文学を、イーストアングリア大学大学院で創作を学ぶ。1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞した。1989年発表の三作目『日の名残り』では、イギリス文学の最高峰ブッカー賞に輝いた。ほか長篇に『充たされざる者』(1995)、『わたしたちが孤児だったころ』(2000)、『わたしを離さないで』(2005)、『忘れられた巨人』(2015)、短篇集に『夜想曲集』(2009)がある。2017年にはノーベル文学賞を受賞。2018年に日本の旭日重光章を受章し、2019年には英王室よりナイトの爵位を授与された。

「朝イチで購入、読了した。カズオイシグロと言えば、信用できない語り手、書き換えられた記憶、がお約束だが、今回はAIロボが語り手なので大丈夫。ただし、ロボには欠けている部分がある。それが上手く機能して、人間のいい部分やダメな部分を照らしている。ロボの情報処理が追いつかない?時の物の見え方が独特で面白い。少年と少女の交流はとても微笑ましかった。人工友人であるロボ、クララの心は友愛に満ちて温かい。ところが同じ愛でも、人間のそれは素敵と手放しで言えるものではない。人間が人間であるがゆえの、どうしようもない悲しい部分を描いているのは、いつものカズオイシグロだった。また、普段はロボの友人=ドラえもん♪などど気軽に考えているが、AIロボという商品を友人にするとはどういうことか、真面目に考えさせられた。」

「AI搭載のロボット少女が主人公(語り手)の物語。科学と人間の在り方について考えさせられる。物語の始めの方から、なんとなく不穏な雰囲気だ。和やかでほっこりするようなエピソードの時にも、読んでいて不安が常につきまとう。読み進めるうちに、登場人物たちの考えが少しずつ明らかになってきて、背筋が寒くなってくるところもある。が、読後は、穏やかな気持ちに包まれるし、もう一度読んでみたい、とも思わせる。著者の作品の中でも、最高の読後感かもしれない。
人を助けたいと思い、根拠が薄い迷信のようなことでも信じて祈る、という最も人間らしい行動を、AIもするなんて、なんと皮肉で、そしてまた希望を感じさせる。2017年にノーベル賞を受賞したときの記念講演で、著者は「人工知能」や「遺伝子編集」「野蛮な能力主義社会」などへ危惧を語っていた。それらが形となったのが本作ということか。」

「終始、AIロボットであるクララの語りで綴られる物語は、読みやすく平易であるが、内容的には奥深い。あまりにもピュア(当たり前か)なクララの心。クララの感情表現が随所でみられるが、そもそも人間とAIの感情とはどう異なるのか。「嬉しい」とか「悲しい」とか感じる感情に対して、クララに対して人間放つ要求は自己犠牲と献身のみ。その要求に対するクララにも、自己愛が希薄なのがあまりにもせつない。人間の欲望は果てしない。進むテクノロジーの中で、人として本当の幸福とは何か、倫理とは何かを考えさせられた。」


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