ラウリ・クースクを探して 宮内悠介 (著) 朝日新聞出版 (2023/8/21) 1,760円

第170回直木賞ノミネート

第40回織田作之助賞ノミネート

1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。

コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。

歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。

「人へ、世界へ、友愛のこもった小説。一見難しそうなコンピュータ関連のこともとてもわかりやすく、静かに語られるなかに希望がみえるようです。宮内悠介作品のなかで、いちばん傑作かもしれません。」

「エストニアという馴染みのない国の少年たちの物語。首都のタリンなんて、この本で初めて知った。ソ連からの独立、ロシアとの民族対立が少年たちに及ぼす圧倒的な影響。
そんな背景が描かれつつ、コンピュータ・プログラムに魅せられた一人の少年がくっきりと息づいていた。美しい場面も、残酷な場面も、じりじりと苛立たしい場面も、それぞれに確かな輪郭を持って描かれていた。
前半は叙事詩のように事実を中心に淡々と歯切れよく物語が描かれる。後半に行くにしたがって、中心人物たちの息遣いが熱を帯びてきて、この世界に生きていることを強く肯定する結末だった。皆、懸命に生きている。この世に生きる全ての一人一人に物語がある。」

「宮内悠介さん『ラウリ・クースクを探して』読了です。直木賞候補作品。ストレートに心に響く作品でした。ロシアに隣接するエストニアが舞台の話。とても読みやすく、一気読みでした。

1977年、エストニアに生まれた少年、ラウリ・クースク。幼いころ、父が持ち帰ったコンピュータでプログラミングに魅了される。エストニアの先進的な情報科学教育のもと、彼の才能は急速に開花。やがて、同じくプログラミングの才能を持つロシア人の少年・イヴァンと出会い、二人は切磋琢磨しながら才能を伸ばしていく。二人はモスクワ大学への進学を夢見ていたが、歴史の大きな波が彼らを引き裂いてしまう──。

歴史の波に翻弄された「ラウリ・クースク」という人物の伝記を書くために、「わたし」という語り手がその足跡を過去にさかのぼって調査していく……という形式で話が進んでいきます。話は最終的に現代に戻ってきます。

歴史的背景について知識が必要かと思いきや、全然そんなことはなく、物語に没頭しながら、エストニアやバルト三国についても知ることができました。

まず、ラウリが使っていたパソコンが「MSX」だということにテンションが爆上がり。これ、私も少年時代に使っていたのです。

MSXは、ファミコンのようにカセットを差してゲームもできたし、MSX-BASICという言語でプログラミングもできました。まさかこんなところで再会するとは……。懐かしさに涙が出ました。

そのMSXを使ってラウリとイヴァンは様々なプログラムを作り、コンペで優勝するなど、非凡な才能を発揮します。「MSXでこんなことができるのか!?」と驚くレベル。

しかし、才能と可能性に満ち溢れていた二人ですが、ソ連の崩壊という歴史の大波によって別れを余儀なくされます。特にラウリは、プログラミングとはかけ離れた苦難の道を歩むことになり、読んでいると心が痛みます。

しかし、そんなラウリを救ったのも、やはり大好きだったプログラミング、そして少年時代の友情でした。

その後、物語はエンディングを目指してまっしぐら。謎が明かされ、後日談が語られ、伏線が回収されます。ラストはスタンディングオベーションを送りたくなるほどでした。

最近、歳のせいか、こういう純粋な友情の話に弱いです。うるうるしてしまう。

歴史の大きな波には、個人の力では抗うことが難しく、大多数の人は歴史の中に埋もれてしまいます。しかし、埋もれてしまった人たちも、親しい人たちにとってはかけがえのない存在です。歴史上の英雄にはなれなくても、一人一人の人生には大きな価値があります。

……と、歴史的英雄ではない小さな一個人の私は読んでいて思いました。

いい小説でした。ラウリとイヴァンとカーテャに会えてよかった!」


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