昭和十八年幻の箱根駅伝 ゴールは靖国、そして戦地へ 澤宮優(著) 集英社 (2020/12/18)

青山学院大学原晋監督推薦

コロナ禍の国難とも呼べる中で、若者たちのスポーツにかける情熱は、戦時下も今も、大きな勇気を与えるに違いありません。

今や国民的スポーツ行事である箱根駅伝に、幻の大会があった。

第二次世界大戦に突入する昭和十五年に軍部の圧力で箱根駅伝は中止された。

しかし、学徒出陣を控え、「もう一度箱根を走って死にたい」という学生たちの念願は、昭和十八年、戦勝祈願の名目で靖国神社をスタートに変えて開催という異例のかたちで叶う。

戦時下の逆境をはねのけ、伝統の襷をつないだ大会の全貌に迫るノンフィクション。

「幻の定義はいろいろあるが、私は長年の箱根のファンであり、プログラム上は昭和35年に正式大会 とされたものの、平成になるまで一般に認知されなかったこの大会こそ「幻」という 名の箱根駅伝に相応しい。そのことは、慶応大学で4区を走られた。兒玉孝正さんも同 じような見解を示されている。 著者はスポーツライター、とくに影の存在を描くのが秀逸な書き手だけあって、史実のしがらみの中でも、確固として人間を深くとらえているのは嬉しい。歴史モノを扱うときも、そこに登場する人物の涙、哀しみ、笑顔、感動が描かれないと一流のノンフィクションは成立しない。著者は、これでもかとインタビューで深く迫り、あの語られなかった駅伝の真相について次第に明らかにされていく。
そして著者に息を吹き込まれたように、かつての選手たちが哀しみを胸に秘めながらも躍動感をもって生き生きと走る姿に涙してしまった。これぞ澤宮優の真骨頂。 とくにこれまで箱根駅伝の歴史を研究された黒田圭助氏に光を当て、今をときめく青山学院の初出場の逸話、日大で6区を走った成田静司氏、杉山繁雄氏の内面に迫り、彼らの戦争体験も描くことで、しみじみとした味わいがあり、一級の歴史スポーツノンフィクションとして成立している。
まえがきを読むと本書を書くことは長年の希望だったという。それゆえに渾身の力作という気概が伝わって来るのも当然だ。ぜひ若い多くのアスリートたちにも読んでもらいたい。」

「ヒューマンドキュメンタリーとしてとても感動しました。スポーツノンフィクションとしても読みごたえがあり、綿密な取材に裏付けられた逸話の一つ一つが、当時の選手の気持ちを思い起こさせ、今の時代に生きる者として忘れてはならないと思いました。箱根駅伝を通して、生きることの意味を改めて考えさせられた作品であり、人間に焦点を当てた佳作と思います。」


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