『はじめてのおつかい』に米国は衝撃…子育て論に発展

『はじめてのおつかい』に衝撃を受けるアメリカ 「かわいい」を超えて子育て論も

Netflixを通じて海外配信が始まった日本のテレビ番組『はじめてのおつかい』をきっかけに、アメリカ流の子育ては過保護なのでは、との議論が現地で巻き起こっています。

アメリカならば通報もの

番組では小さな子供が親からおつかいを頼まれ、スーパーに向かって買い物をしたり、親戚の家から指定のものを持ち帰ったりするのです。

日本の視聴者の多くは、ひとり奮闘する姿に、可愛さと応援の気持ちで心を掴まれています。

しかし、アメリカでは愛らしさが受けると同時に、子育てのあり方論にまで発展しているのです。

米ジャーナリストのジェシカ・グローズ氏はニューヨーク・タイムズ紙(4月16日、以下「NYT」)に寄稿し、「番組の可愛さにすっかり魅了されたと同時に、私はこのようにも感じました。アメリカではきっとうまくいかない」と、アメリカでは成立しない番組内容だとの見解を示しました。

グローズ氏は、仮にアメリカ版が製作されたならば、ひとりで出歩くことを許した親は無責任だとの批判が避けられないだろうとみるのです。

スレート誌(4月11日)も同様の論調です。

「この番組がアメリカでの話だったならば、いうまでもなく、両親は児童保護局による調査対象となり、子供は里親制度のもとに出されるだろう」と述べており、社会的に受け入れられづらいだろうとの立場です。

過保護が問題に

こうした意見は日本の子育て論を批判するものではありません。

むしろ、アメリカ流はかなりの過保護なのではないか、との論が目立ちます。

NYT紙は、育児書の著者であり日米両国での生活経験をもつクリスティン・グロスロー氏の意見として、日本では「6歳でひとりで留守番ができ、包丁を使って料理し、学校まで歩いて通学する」ことができるような教育に重点が置かれていると説明しています。

世界でもこうした例は少なくありません。

一方アメリカでは、子供をひとりで留守番させてよいと親たちが考える平均年齢は13歳と、大きな隔たりがあるのです。

ひとつの理由として、親のみならず地域ぐるみで子供を見守る下地が日本にはあるのかもしれません。

スレート誌によると、14ヶ国を対象にした調査において、「地域の大人がよその子供に目を配っている」が当てはまると答えた親の割合は、日本が最も多かったのです。

考え方を変えるきっかけに

番組に対しては、一部批判的な意見もあるようです。

アメリカの児童心理学者は、米NBCの朝の情報番組『トゥデイ』(4月14日)のなかで、『はじめてのおつかい』は「極限状況」だと切り捨てました。

もっと少しずつ挑戦の範囲を広げなければ、子供の発達に効果が薄いというのです。

一方、NYT紙に寄稿したグローズ氏は、「『はじめてのおつかい』の視聴を通じ、より多くのアメリカの親たちが、我々の文化的基準はリセットあるいは少なくとも再考する必要があるのでは、との可能性に気づいてくれるよう願っている」と述べています。

出演した子供たちの笑顔をみて、氏自身の子供にも達成感を与えてやりたいと思うようになったそうです。

純粋に番組を楽しむ人々も多いなか、思わぬ深い考察が生まれているようです。

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