あんなに歯磨きしてるのに…日本人にむし歯が多い残念な理由とは

「食後の歯磨き」を欠かさない日本人に「虫歯が多い」残念な理由

世界有数の医療先進国でありながら、病気になる前に予防する「予防医学」の浸透が遅れている日本。

なぜ、日本人の予防意識が高まらないのでしょうか。

その大きな要因として挙げられるのが「国民皆保険制度」です。

治療費の自己負担が少ないのは大きなメリットですが、「病気になったら治せばいい」という考えで医療に依存するのは危険です。

今回は「歯科」に着目し、日本人の健康意識の実情を見ていきましょう。

日本人の「歯の汚さ」は先進国でもワースト

「先進国のなかでも日本人の歯は汚い」といわれています。

この理由は、保険診療では予防歯科が重視されていないこと、銀歯しか入れられなかったことが理由と考えられます。

日本では「痛みが出たら治療し、痛みがなくなればそこで治療を終了」という人が多く、予防のために歯科に通う人が少ないのです。

銀歯に関しては、ある歯科医師がイギリスに留学に行ったとき、教授から次のように言われたそうです。

「日本人はエグゼクティブにも歯に問題がある人がたくさんいるね。以前、日本のトップ経営者が有名な雑誌に出ていたのを見たけれど、掲載されている写真が笑った写真だった。それで口の中にいくつもの銀歯があるのが見えたんだ。さらにひどいのが歯の色が黄ばんでいること。トップ経営者の口元がこんなレベルなのか…と正直驚いたね。日本人は健康の意識が高く、性格的にもまじめで清潔感もあるのに歯に無頓着な人ばかりなのはなぜだろう、不思議だよ」

日本のトップリーダーは欧米と比較しても身にまとっているスーツも靴も髪型も引けを取ることはありませんが、唯一残念な点が「笑ったときの口元」です。

日本は世界でも有数の医療先進国であるにもかかわらず、歯については見た目、また、健康面のどちらにおいても発展途上国であるといえます。

欧米ではきれいな歯はステータスですから、お金があればまず歯に使うのが普通です。

仕事を成功させたい方は「時間がなくて歯の手入れなんかしてられない」ではなく、「歯をきれいにして健康になり、ビジネスを成功させよう!」という発想の転換をしてほしいと願います。

歯磨きの習慣があるのに虫歯が多い日本人

歯の予防といえば、日本人は食後の歯磨きの習慣があるにもかかわらず、虫歯が多いことでも知られています。

12歳の子どもの虫歯の数を比較すると、日本が他国より多いのが分かります。

虫歯の原因の一つである砂糖の消費量は他国よりも少ないにもかかわらずです【図表】。

【図表】世界の??数と砂糖消費量
虫歯になった数:WHO「Oral Health country/area profile」砂糖消費量:ISO(国際砂糖機関)より作成

歯磨きの習慣があるといっても、しっかりと磨いているか、適当にやっているかで大きく差がつきます。

そもそも、歯磨きだけだと汚れを落とせる割合は約60%といわれています。

歯間ブラシ、フロスを使うことでやっと100%に近くなるのです。

歯と歯の間にこびり付いた汚れは歯磨きだけでは落ちないため、補助器具は重要です。

さらに超音波歯ブラシを使うと、より汚れを落としやすくなります。

そしてセルフケアで落とせなかった汚れを、定期的に歯科でクリーニングしてもらえば、虫歯や歯周病になる確率はぐっと減ります。

幼い頃に虫歯が多いことは、高齢者になってからの残存歯数にも関わります。

厚生労働省と歯科医師会が進めている「8020運動」でも、日本人の残存歯数が少ないことが問題視され、「80歳になっても20本以上自分の歯を残そう」ということを目標に行われています。

虫歯の多さも残存歯数の少なさも、その原因は定期検診や歯のメンテナンスなどの予防歯科を受ける人が少ないことです。

一方、予防歯科の先進国であるスウェーデンでは、約90%の人が歯科検診・歯のクリーニングを定期的に受診し、70歳での残存歯数は20本を誇ります。

これは、保険診療で受けられる治療にこだわると、予防ができず歯を失ってしまう日本の問題を明らかにしているデータだといえます。

余談ですが、日本はお尻をきれいにする文化は世界一で、「ウォシュレット王国」といわれているのに、歯をきれいにすることに関しては意識が低いのです。

日本では「いい歯科衛生士」が育ちにくいという問題も

予防歯科では歯のクリーニングを歯科衛生士が担当することが多いですが、日本では技術力の高い歯科衛生士が育たないことも問題です。

歯科衛生士が育たない理由として、保険診療の医院では多くの患者をさばくために業務が過密になりがちで、仕事内容が明確でないということが挙げられます。

また、歯科衛生士を指導する機会をつくるのが難しいという側面もあります。

例えば歯科医師が一人しかいないようなクリニックでは、その分歯科衛生士の業務負担も増え、本来の歯科衛生士としての仕事ができず、腕を磨くこともできないといったケースも珍しくありません。

多忙が原因で離職してしまい、高いスキルをもった歯科衛生士が育ちにくくなるのです。

海外では、歯科衛生士が麻酔を打って、歯周病の歯石取りも行っているところもあります。

そういったことができると、責任感も出てきますし、患者の歯周病を自分が治せるという自信がつき、歯科衛生士という仕事へのやりがいも強くなるはずです。

これは患者というより医院側の問題になってしまいますが、日本でも歯科医師がきちんと指導して歯科衛生士を育てていけば、歯科界全体の技術力向上にもつながり、それが患者に還元されるのではないかと考えています。

自由診療で患者一人ひとりに時間をかけられるということは、スタッフがしっかりした知識と技術を身につける機会を確保することにもなるのです。



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