
気がつけば軽も商用車もみんなDOHC!
「SOHCエンジン」を最近見かけないワケ
エンジンの動弁メカニズムとして、一時は大半を占めていたSOHC方式を、最近ではほとんど目にしなくなりました。
代わって主流となったのがDOHC方式です。
目次
エンジンの性能を追求するうえで進化を繰り返したバルブ方式
動弁機構の進化は、自動車エンジンの歴史をたどってみるとよくわかります。
自動車が普及し始めた頃のバルブ開閉機構は、シリンダー側方に吸排気バルブを配置するSV(サイド・バルブ)方式が一般的でした。
メインテナンス性が良好、騒音が低いといった理由で広く採用されていたのですが、エンジンの性能向上を果たしていく段階で、シリンダー上方に吸排気バルブを配置したほうが有利だということになり、シリンダー上部に吸排気バルブを配置するOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)方式がとって代わるようになったのです。
ワイが前乗ってたパジェロミ二、あの時代の軽自動車のエンジンってコスト削減のためにSOHCが主流の中、ちゃっかりDOHCだったりするの個人的にプラスポイント
— ぐで郎 (@GudeBRRR) June 24, 2020
SV方式に較べ、燃焼室形状のデザインの自由度が高いことから燃焼効率の向上を図ることができ、SV方式からバルブ開閉機構の主役の座を引き継ぐかたちとなっていました。
さらに、自動車に高速性能が求められる時代が到来すると、OHV方式より高出力型、高効率型のエンジンが求められるようになりました。
というのは、エンジンの高出力化を図るうえで有効な方法は、エンジン回転数を引き上げることが端的な手法と考えられてきたからです。
しかし、エンジン回転数を上げていくうえでネックとなるのは、吸排気バルブの正常な作動と動弁系の動きでした。
最近のホンダ車はデカイ軽自動車ばっかりでつまらん!!!
小排気量高出力
グラム単位の軽量化
DOHC VTEC 搭載
職人の技と英知が生かされたこの一台
インテグラTYPER!!
こういうクルマがホンダやろ!!! pic.twitter.com/AKUXqZqHQI
— スマイリー前田 (@98spec_) July 15, 2020
SOHCのほうが有利なことも
OHV方式では、シリンダー下方に位置するカムシャフトからプッシュロッド→ロッカーアーム→吸排気バルブと長い駆動伝達システムが必要となっていたのですが、
カムシャフトをシリンダー上部に配置することでプッシュロッドを廃し、
カム山から直接短いロッカーアームを駆動して吸排気バルブを開閉するSOHC方式のほうが、高速回転対策として有利になることは明らかだったのです。
動弁系の慣性質量が減ることにより、より正確な高速回転運動が可能になるからです。
なお、SOHCには、ロッカーアームの形状、配置を工夫することで、吸排気の流れをスムースに行えるクロスフローヘッド(半球型燃焼質)の設計も可能で、
吸排気バルブをカムシャフトと平行に一直線上に配置する標準的なターンフローヘッド(ウエッジ型あるいはバスタブ型燃焼室など)より高効率化(高性能化)が可能です。
480. AZ-1
1992年~1994年までマツダ㈱が製造販売していた軽自動車です。アルトワークスと同じF6A型3気筒DOHCターボエンジンを後部(ミッドシップ)搭載しガルウィングを採用するなど小さなスーパーカーでしたが、実用性がかなり犠牲にされた事とATの設定が無かった事により販売面で苦戦を強いられました pic.twitter.com/7YdFfkOBle— レトロ大好き颯 (@Retrohayate) July 3, 2022
燃焼効率を追求するとかえって複雑な機構を必要とするSOHC
しかし、逆に言うと、SOHC機構で効率的な燃焼室形状を得ようとすると(クロスフローヘッド化)、動弁系にロッカーアームが必要となり、動弁系の慣性質量を増やすことにもなってしまうのです。
動弁系の慣性質量の増加は、そのこと自体が高速回転時の正確な動弁系の動きを妨げることになり、
より高速回転で高出力を得ようとした場合には、カムシャフト(カム山)からバルブまで動弁系の簡素化が必要不可欠で、このために考え出されたのがDOHC方式です。
この方式は、吸排気バルプそれぞれに専用のカムシャフトを設けるかたちとなるため、理想的な燃焼室形状といわれる半球型燃焼室を形成しても、吸排気のカム山がダイレクトにバルブを駆動できるため、より高速回転が可能になります。
この半球型燃焼室によるDOHC方式が2バルブDOHCで、世界的には1980年代前半まで量産車メカニズムとして最高峰に位置付けられ、多くの高性能エンジン(ほぼスポーツタイプ用)が量産化されてきたのですが、これを上まわる吸気2/排気2の4バルブDOHCが量産実用化され、ペントルーフ型燃焼室との組み合わせにより高性能エンジンの最高位に立ったのです。
サンバーのリアに搭載されているEN07はスバル自社生産軽自動車では定番の4気筒エンジン
個人的に大好きでEN07は4台目です
DOHC+SC / DOHC / SOHCのバリエーションに乗りましたが何故か1番良い音がするのがサンバーに搭載されているSOHCなんですよね
シンプルな構造の方が良さを感じるのでしょうか pic.twitter.com/TDH0iwvIYP
— VOLG CARS (@VolgFreeman) May 29, 2022
当初は、高回転/高出力に主眼の置かれた方式でしたが、燃焼効率に優れることから低公害エンジン(時代背景に合致した標準型式と言い換えてもよい)の基本型式としても注目されることになり、現在にいたっています。
さて、一時期見られたSOHCエンジンが影を潜めた理由ですが、4バルブDOHC方式の生産が一般化し、かつてのように高コストな方式ではなくなったこと、SOHC方式で燃焼効率の高い理想的な燃焼室形状を設定しようとすると複雑な動弁メカニズムが必要となり、むしろコストパフォーマンスの悪いエンジンとなってしまう可能性が高いこと、などが挙げられます。
もちろん、現在でも工夫を凝らしたSOHC方式はあり、たとえばヘッドまわりをコンパクトに仕上げたいなどの設計意図により、出力性能以外の目的によって実用化された例も見ることができます。
ビートのE07Aエンジン、DOHCだったら…という話ですが、カムを一本増やしたところであれ以上の絶妙なフィールになったかどうか。
今の軽自動車のエンジンはほぼDOHCになってるけど、あのスポーティーな感じは再現できないだろうし。 pic.twitter.com/zqjyfOM090— Norio (@459factry) October 21, 2020
ネットの声
「現代のDOHC主流化は、可変バルブ機構で吸排気を別々にコントロールしやすいという親和性の高さがスケールメリット以外の大きな理由として挙げられるはずですが。DOHCでもロッカーアームを併用する例は多々ありますし(8000rpmまで許容するBMWのE46型M3のS54B32型もそう)、逆にかつてのアルファロメオやホンダのV6あるいは元をたどればアウトウニオンのV16のようにSOHCながら吸気弁を直接駆動する例もあるので、動弁系の慣性重量については単純にDOHCの方が小さいとは言いきれないでしょう。ちなみに、クロスフロー化はOHCでなくともOHVでも可能です。」
「答えは一つである必要はないし、色々あるから面白い。コストや効率重視で一つの評価軸だけが優遇される傾向を危惧している。私はシンプルなOHVが一番好きなので、それをこれからも大切にします。」
「燃費向上のためのバルブ制御などDOHCではないと難しい面があるからでしょうね。でもSOHCの方が部品点数も少なく軽量でコンパクトな設計にできるので、整備性や耐久性など良いこともいっぱいあると思います。」