徳川おてんば姫 井手久美子(著) 東京キララ社 (2018/6/14)

江戸幕府の最後の将軍、徳川慶喜の孫に当たる井手久美子さんによる一代記。

ご高齢になり、戦前の大六天のお屋敷(徳川慶喜が最後に暮らした東京のお屋敷)のことや当時の華族の暮らしぶりについて、

知っている人は自分だけになってしまったので、書き残しておかなければということで出版されたとのこと。

3400坪もあって大勢の使用人がいるお屋敷の様子など、

江戸時代のお殿様の暮らしはこんな感じだったのかなと往事が忍ばれます。

しかし、著者が「みなさんが思っているより、ずっとお転婆でびっくりされると思いますよ」と書かれているように、現代から見ると「意外とお姫様の暮らしも普通なんだな」という感じです。

それでも、現代と同じような「洋服を着て、車で学校に通って、テニスをしたり、葉山や軽井沢に避暑や旅行に行く」暮らしは、

当時の庶民の「いつも和服で、小学校を出たら働いて、車などはアメリカ映画の夢の世界」の暮らしぶりからすると、

とても贅沢なことだったのでしょう。

この本の一番面白いところは、お姫様の暮らしぶりの変遷。

第六天の大きなお屋敷の暮らしから、戦争で八王子に疎開。

自分で農作業も行う暮らしを行うようになります。

そして、戦後に戦費の借金を帳消しにする莫大な財産税でお屋敷と華族の身分がなくなり…。

医師と再婚して普通に働くようになるのです。

老後は千葉のマンションで暮らすという変化は、まさに戦後の庶民の暮らしの変化そのもの。

すごいのは、どんな新しい状況でも前向きに楽しんで暮らされていること。

好奇心も旺盛で、どんなに社会が変わっても、こうやって前向きに暮らしていけばいいんだと勇気づけられます。

お姉さんは、皇族の高松宮の妃殿下になられるなど、いろいろなエピソードが満載。

ストーリーに引き込まれて一気に読めてしまう面白さですよ。

「徳川慶喜公のお孫様のお書きになった往時の暮らし…資料や日記からではわからない行事、日常が美しい日本語で書かれています。
楽しい事も辛い事も育ちの良い方々の受け止め方、表現はとても真摯で慎ましやかです。それが丁寧に書かれています。
95歳でここまでおまとめになり、残してくださって嬉しく思いながら読みました。
小さな出版社ですが、購入者へのメッセージを本に添えてあり、それもまた日本の美徳が感じられ購入して良かったと思いました。優雅に暮らす人と、そうでない方々が存在するの 世の常だけれど、それでもこの時代は上も下も心が通じ合っていたと感じられます。
歴史家の資料に基づいた本も良いですが、名家の方の書かれた本はまた格別です。多くの人に手にとって欲しいと思います。」


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出版翌月に安堵したように亡くなられたのも「徳川おてんば姫」らしいと言えます。

おすすめの本です。

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