日傘を差す女 伊集院静(著) 文藝春秋 (2021/7/7)

伝説の男はなぜ死んだのか。

快晴のクリスマス、都心のビルの屋上で、胸に銛が刺さった血まみれの老人の遺体が発見された。

老人は和歌山県太地町に住む捕鯨船の伝説の砲手と判明。捜査本部は他殺を裏づける証拠を得られぬまま、自殺と結論づけた。

しかし、その直後、酷似した凶器で殺害された遺体が次々と見つかる。

警視庁捜査一課の草刈大毅と立石豊樹のコンビが、赤坂、和歌山、青森で地を這う捜査の果てにつかんだ真相は……

「帯のキャッチ・コピーもほぼ同じく「社会派推理小説」。でも、読んでみれば「社会派」でも「推理」でも「警察」でもなかった。「社会の巨悪」を追及するのではなく、「トリック」をあばいて「真犯人」にたどりつくというほどの中身でもなく、「警察組織内部の腐敗」を鋭く追及するのでもなく、せいぜい汚職刑事が登場するぐらい。

もちろん作者の生命線である「慕情」「叙情」「純愛」「花柳界事情」は厳しく守られている。「人間は絶望したから死ぬんじゃない。死のうとするのは希望が見えないからだ。」「人間は生まれて来た時から悪いことをしようと生きる人は一人もいない。」「皆しあわせになるために生きて来たんですよ。」「(花柳界は)器量良しが辛」

「作者は直木賞や紫綬褒章をもらった大御所気取りだが、俺は過大評価だと常々感じていた。本書も最初の100ページ位までは連載が細切れで結局6年もかかった内容なんで、取りとめがなかった。一応、ワンパターンのお得意、芸妓が主題で、決して警察、まして社会派小説の傑作なんかじゃないレベル。持ち味のlyricismが全然感じらんないし、ヒットしたエッセイも、マンネリ化。古稀も近い小説家とてしても終わった人だ。暇潰しにはいいけど。彼より腕利きの作家は数知れずだ。
作家には、ピークがあるんだよ。」

「会話中心の文章でスイスイ読めます。快調!2時間ドラマ用のシナリオですね。登場人物の描き込みが甘く、きれいさっぱり何も残りません。誰に感情移入すればいいの?」


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事