無意味なものと不気味なもの　春日武彦 (著)　中央公論新社 (2024/5/22)　1,012円

2024年5月23日 2024年5月23日

abundant

過去の人生において遭遇した、明確な恐怖とは言いがたい、けれど忘れることのできない記憶や小説。

大ヒット作『恐怖の正体』（中公新書）で話題を呼んだ作家・精神科医である著者が、精神の根源に触れるそうした〈恐怖寸前〉の〈無意味で不気味なものたち〉に惹かれて渉猟した、異色の文学エッセイにして読書案内。

刊行以来、ホラーや幻想文学の実作者を中心に、多くの読者から絶賛を得てきた名著に、書き下ろしの新章を増補した新版。

誰もが体験しながら、ふだんの日常においては意識の底に沈められがちな〈あれ〉を求めて……読めばきっと、あなたも語りたくなる。

推薦・澤村伊智
解説・朝宮運河

明日5/22は新刊発売日です。順不同にてご紹介します。

『無意味なものと不気味なもの』
春日武彦

あれはいったい何だったのだろう――精神の暗部に触れる無意味で不気味なものを論じる異色の文学エッセイに、書き下ろしを増補した決定版。
〈解説〉朝宮運河 pic.twitter.com/XPDwOIrOn0

— 中公文庫（中央公論新社） (@chuko_bunko) May 21, 2024

【目次】
文庫版のためのまえがき
まえがき

１　隠蔽された顔――Ｎ・ホーソーン『牧師の黒のベール』
２　本物そっくり――河野多惠子『半所有者』
３　糞と翼――パトリック・マグラア『長靴の物語』
４　姿勢と連想――古井由吉『仁摩』
５　受話器を握る怪物――Ｈ・Ｐ・ラヴクラフト『ランドルフ・カーターの陳述』
６　孤独な日々――日影丈吉『旅は道づれ』
７　南洋の郵便配達夫――Ｊ・Ｍ・スコット『人魚とビスケット』
８　描きかけの風景画――藤枝静男『風景小説』
９　墜落する人――レイ・ブラッドベリ『目かくし運転』
10　救われたい気持ち――高井有一『夜の音』
11　果てしない日々――クレイ・レイノルズ『消えた娘』
12　世界の構造――富岡多惠子『遠い空』
13　グロテスク考――カースン・マッカラーズ『黄金の眼に映るもの』
14　うふふ。――車谷長吉『忌中』
16　昆虫的――内田百閒『殺生』＋ブルーノ・シュルツ『父の最後の逃亡』
16　入り込んでくる人――庄野潤三『黒い牧師』

あとがき

解説　朝宮運河

〈本書は、無意味なものと不気味なものにまつわる探求報告であり、「あれはいったい何だったのだろう」という呟きの執拗な反復である。もし読者諸氏にも「あれはいったい何だったのだろう」との文言が病原菌のように感染すれば、著者としては嬉しい。寂しさがまぎれ、この世界に生を営んでいくことの不安を、幾分なりとも忘れさせてくれそうだからである。……〉（「まえがき」より）

著者について
春日武彦
一九五一年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。医学博士。産婦人科医を経て精神科医に。精神科専門医。都立中部総合精神保健福祉センター、都立松沢病院精神科部長、都立墨東病院神経科部長などを経て、現在、成仁病院院長。臨床の傍ら専門書・一般書・書評などの執筆を旺盛に続けている。著書に『幸福論』『援助者必携はじめての精神科』『鬱屈精神科医、占いにすがる』『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』など多数。

(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)