病気の日本近代史 幕末からコロナ禍まで 秦郁彦 (著) 小学館 (2021/2/1)

新型コロナ克服のヒントは「歴史」にあり

近代日本は「流行病」「難病」との闘いの連続だった–。

明治天皇や陸海軍兵士たちが悩まされた脚気から、軍民に蔓延したスペイン風邪などの伝染病、「亡国病」と恐れられた結核やマラリア、患者が増える中で治療法の模索が続いてきた精神疾患、現在死因トップのがんまで、日本人は多くの病気に悩まされてきた。

そして今また、「新型コロナウイルス」という未知の病が襲来している。果たして、この新たな感染症といかに向き合うべきなのか。

〈人類の歴史は、一面では感染症(伝染病)との戦いの歴史でもあった。だが戦うと言っても、一方的な防戦と敗北の連続で、十四世紀のペスト流行では欧州大陸の住人の半分近くが倒れ、人々は全滅の恐怖におののいた。
ようやく勝機が訪れたのは、病原である細菌やウイルスの正体が見え始めた、たかだか二百年前からである。(中略)
だが戦いが終ったわけではない。〉
「第八章 新型コロナ禍の春秋」より

本書は、医師や医療専門家ではなく、政治史や軍事史を中心に研究・執筆を重ねてきた現代史家の手になる医学史である。

そのため、医学の研究書とは異なり、歴史家の視点から「難病の制圧をめざす国家的な総力戦」の過程を検証しつつ、「人間の生死をめぐって運と不運、喜びと悲しみが交錯するドラマ」を描きだしている。

新たな疫病が猛威を振るう今こそ知るべき“闘病と克服の日本史”。

【編集担当からのおすすめ情報】
本書は、もともと著者の秦氏自身が盲腸(虫垂炎)の手術を受けた際に読んだ医学史の面白さに引き込まれ、歴史家の手法で近代日本の医学史に取り組んでみようと考えたことがきっかけでまとめられたものです。

今回、7章立てとなっていた同名の単行本(2011年刊)に、新型コロナウイルスに関する新章などを大幅に書き下ろし、さらに統計データなどを最新のものに更新して新書化しました。

結果的に500ページ近い大著となりましたが、著者が集めた闘病にまつわる秘話や難病克服のエピソードがたくさん盛り込まれており、医学の専門的な知識がなくても、近現代の日本人の“苦闘”の足跡を学ぶことができる読み物となっています。

まさに今この時期だからこそ読みたい貴重な史実が満載で、一度読み始めたらページをめくる手が止まらなくなる一冊です。

「秦郁彦氏の『病気の日本近代史 幕末からコロナ禍まで』 (小学館新書)を読んだ。
10年前の2011年5月に刊行された『病気の日本近代史 幕末から平成まで』 (文藝春秋)の改題・新書化。
サブタイトルの変更からもわかるように、「令和」になって発生し現時点でも流行している武漢ウイルスによる「コロナ禍」について新たな章(第八章・新型コロナ禍の春秋)が書き下ろされ、それ以外の章も統計データなどを最新のものにしたりして加筆もされている。
文藝春秋の単行本版は刊行当時読了ずみ。今回再読した次第。
医学史に関心を持ったのは、ご自身が盲腸(虫垂炎)の手術を受けた際に読んだ医療関連のマンガや著作に啓発されたのがきっかけ。謎というか疑問というか興味をもって、調べだして深みにはまってこの本が上梓されることになったようだ。」


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