怒羅権(ドラゴン)と私 汪楠 (著) 彩図社 (2021/1/27)

後に半グレ組織となる「怒羅権」の結成、メンバーとの交流、血なまぐさい喧嘩、拡大していく組織の裏側などをはじめとして、14歳で中国から日本にわたってきた著者の苛烈な人生が描かれる。

怒羅権はどのようにして結成され、どのようにして暴力団からも畏怖される組織になっていったのか、そして著者はなぜ13年という長い期間を刑務所で過ごすことになったのか。

現在は犯罪から距離をおき、刑務所の受刑者に対して書籍を送ることで更生を促すプロジェクトをしている著者の汪楠(ワンナン)氏。『NHKスペシャル』『ザ・ノンフィクション』などにも登場する汪楠氏が壮絶な半生をすべて語る。

犯罪集団へと変質していった怒羅権ですが、結成当初はこのような組織を目指していたわけではありません。

日本社会で孤立していた中国残留孤児の子孫たちが生き残るため、自然発生的に生まれた助け合いのための集まりでした。

創設に関わった古参メンバーの中には現在の怒羅権の状況を残念に思い、解散させたいという声も存在します。

この本によって自分たちのしてきたことを正当化するつもりはありません。

自分たちが何者であったのか、なぜ怒羅権という怪物が生まれたのか、そして犯罪者として生きてきた私が服役を終えた今、日本社会をどう捉えているのか。
自分自身の半生を振り返ることで、それを記していきたいのです。(はじめにより)

著者について
1972年中国吉林省長春市生まれ。
エリート家系に生まれるも文化大革命の影響を受け、少年時代に犯罪集団の襲撃を受けるなどして育つ。14歳の誕生日に日本に渡り、以後、日本での生活を送ることになる。通学する葛西中学校には多くの中国残留孤児2世がいたが、どの家庭も貧困や差別に苦しんでおり、いじめに遭う者も多かった。残留孤児2世に対する激しいいじめに抵抗するために、自然発生的に集団化していったのが怒羅権だった。汪楠は創設期の怒羅権のメンバーである。 後に、暴力団に属し、さまざまな犯罪行為を行うが、2000年に詐欺罪などによって逮捕。13年の実刑判決を受け、岐阜刑務所で服役生活を送る。
2014年に出所。犯罪の世界には戻らないことを心に決めて、2015年には全国の受刑者に希望の本を差し入れする「ほんにかえるプロジェクト」を立ち上げる。現在も自分が犯した罪や怒羅権と社会の在り方などに向き合いながら活動を続けている。

「“強さ=弱い人や困っている人達を助けるための強さ”であってほしい。彼らが置かれていた強い逆境の中では、キレイ事だけではやっていけなかった部分があったとは思いますが、行動力も頭の良さも持ち併せている人達なのだから、被害者を出さない方法で活躍して頂きたいと願います。」

「著者は良くも悪くも普通の人間が経験することは無いような経験をたくさんされていますが、どんな人間も悪であろうとしているわけではなく、それぞれの正義感を持ってただ必死に生きようともがいているだけであることが分かります。」

「著者はかなり詳細に当時の中国残留孤児たちが受けた差別や暴力、自分たちが行った犯罪などについて書いているのですが、その書き方はまるで調書みたいに淡々としていて、これが独自の読み味を生んでいる。だってそんな淡々とした書き方なのに内容は「首を切り落とそうとしたけど、首の骨が意外に固くて落とせなかった」とか「敵対する暴走族を鎮圧したあと、土下座させ、あばら骨を一本ずつ折って、橋から川に落とした」とかめちゃくちゃ。この文体と内容のギャップに生々しいリアリティがあって実に読ませます。」


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