縁もゆかりもあったのだ こだま (著) 太田出版 (2021/4/23)

第34回講談社エッセイ賞受賞作家こだまの最新作!

場所と記憶をめぐる、笑いと涙の紀行エッセイ

「俺はたった今刑務所から出てきたんだ」

私たちは「えっ」と発したまま固まった。刑務所と監獄博物館のある街特有の冗談だろうか。

膝の上に載せた「かにめし」に手を付けられずにいた。

(中略)別れ際、おじさんが「これやるよ、餞別だ」と言って渡してきたものを広げてみた。それは首元や袖口の伸びきったスウェットの上下だった。

第34回講談社エッセイ賞受賞のエッセイストこだま、待望の新作は自身初となる紀行エッセイ。

どの場所でも期待を裏切らない出来事が起こり、そして見事に巻き込まれていくこだま。

笑いあり、涙あり、そしてドラマチックな展開に驚く内容も。

網走、夕張、京都などにとどまらず、病院や引っ越し、移動中のタクシーなど「自分と縁のあった場所」について全20篇を収録。

目次
京都を知っていた(京都・南禅寺)
祈りを飛ばす人、回収する人(台湾)
東京は、はじまりの地(東京・品川)
メロンと郷愁(北海道・夕張)
監獄のある街で(北海道・網走)
母を知る旅(京都・嵐山)
私の藻岩山(北海道・札幌)
乗り合わせた縁(飛行機・タクシー)
事件は風呂場で起きる(某所)
浅草寺と奇縁(東京・浅草)
ブルーシートの息吹(自宅→新居)
ただ穏やかなホノルルの夜(ハワイ)
祖母の桜(病院)
熊の恋文(実家)
双葉荘の同窓会(学生時代の借家)
寄る辺のない旅(ロンドン、パリ、ローマ)
あの世の記憶(青森、秋田、岩手)
猫を乗せて(車)
凍える夜の鍋焼きうどん(ビジネスホテル)
ロフトとニジョージョー(京都)

「家族や夫にバレてはならないというスリリングな状況なのに、著者からは常に明鏡止水にして春風駘蕩な大人の風格さえ感じます。個人的に面白いと思ったのは、夫婦してメロン断ちしてまで行ったメロン食べ放題の話や妹の結婚式のために家族でハワイに行った話です。前者はメロンのために気合いの入れ方が半端ではなく、後者は言葉は極めて悪いのですが「進むも地獄。引くも地獄。」といった感じになっています。またただ笑いを取るだけではなく、飛行機が遅れて地理不案内な老夫婦のために同行してまで案内役を果たす話と昔通った店で鍋焼きうどんを食べて涙をこらえて店を後にする話が人の心に春風を吹かせるようで良かったです。」

「浴衣を引きずるお母さん、あ、これって私。私も海外の公園でのんびり過ごしたい。難しいことなんか書いていない。ただ、寄り添ってくれる。こだまさんは辛い事も視点を変えていい方にとらえる。人と違った考えでも、このままでいいんだと、不思議な自信が湧いてきた。」

「こだまさんのエッセイはいつも私をその場所に連れて行ってくれる。ひとつひとつの言葉がきちんと伝わってくる。京都には何回も行ってるのに、こだまさんの本を読むと必ず行きたくなる。」


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