羊は安らかに草を食み 宇佐美まこと (著) 祥伝社 (2021/1/7)

認知症を患い、日ごと記憶が失われゆく老女には、それでも消せない “秘密の絆” があった――

八十六年の人生を遡る最後の旅が、図らずも浮かび上がらせる壮絶な真実。

日本推理作家協会賞 『愚者の毒』 を超える、魂の戦慄。

過去の断片が、まあさんを苦しめている。

それまで理性で抑えつけていたものが溢れ出してきているのだ。

彼女の心のつかえを取り除いてあげたい――

アイと富士子は、二十年来の友人・益恵を “最後の旅” に連れ出すことにした。

それは、益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。

大津、松山、五島列島……満州からの引揚者だった益恵は、いかにして敗戦の苛酷を生き延び、今日の平穏を得たのか。彼女が隠しつづけてきた秘密とは。

旅の果て、益恵がこれまで見せたことのない感情を露わにした時、老女たちの運命は急転する――。

「新作が刊行されるたびに、いの一番で予約購入し、届いたらすぐに読み始め、そして、毎回期待を裏切らない――という数少ない作家さんの一人です。とりわけ今作のように、謎をある人物の過去へ埋め込み、それが少しずつ解明されていくというプロットは、白眉。いくつかの俳句をキーワードに、少しずつ解明されていく過去は、読み手の胸の底に重い哀愁を積んでいく。さらに、クライマックスの謎解きがもたらすのは、魂の震えと表現しても大仰ではありません。今回も、おみごと。」


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事