かんむり 彩瀬まる (著) 幻冬舎 (2022/9/14) 1,650円

「私たちはどうしようもなく、別々の体を生きている」

夫婦。

血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人。

かつては愛と体を交わし、多くの言葉を重ねたのに、今はーー。

夫が何を考え、どんな指をしているのかさえわからない。

「私のかんむりはどこにあるのか」

著者4年ぶり書き下ろし長編。

「誰も悪くないけど、この感情をどこに置いたらいいんだろう、というできごとは生きていれば避けることはできません。主人公である光もその家族も、周囲の人も、そのできごとに向き合ってみたり、目をそらしたり、八つ当たりじみた行為に及んでみたり、さまざまな形で自分の感情を自分なりに消化して、なんとか生き抜こうとしています。
それでもどうしても苦しい。自分を含めて誰かが飛び抜けて悪いわけではないのに苦しさが抜けない。
読み進めるなかで彼女たちのそれぞれの苦しさが私にも伝染するようでした。そのくらい切実な物語で、結末についての感想は伏せますが、期待以上でした。

白か黒か、とはっきり選択できないことや、する勇気が出ないこと、後悔しそうなこと、既に後悔していること、そんなひきつれた気持ちに襲われる瞬間が山ほどあります。そんな自分も悪くないとはまだ思える日は来そうにないけれど、まるごと受け止められるような日が私にもいつかくるんじゃないかと思えるような作品でした。
彩瀬まるさんの好きなところは、どちらかだけを悪役に設定して、どちらかだけに正義を持たせることをしないところです。それだけでなくて、それぞれが思う心情も、汚い感情も、まるっと表現してくれるので読み手としてこんなに安心する物語はありません。自分の中の汚い気持ちも、むきになって打ち消すことはしなくてもいいのだと思わせてくれます。私の生きる糧です。

次回作はいつでしょうか。また楽しみに待たせてください。」


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