昨日がなければ明日もない 宮部みゆき(著) 文藝春秋 (2021/5/7)

「宮部みゆき流ハードボイルド」杉村三郎シリーズ第5弾。

中篇3本からなる本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。

自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザーを相手に、杉村が奮闘します。

【 収録作品】
「絶対零度」……杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院ししてしまい、1ヵ月以上も面会ができまいままで、メールも繋がらないのだという。杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるが……。

「華燭」……杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する……。

「昨日がなければ明日もない」……事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。

「子供の命がかかっている」問題だという。

美姫は16歳で最初の子(女の子)を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な女性であった……。

「杉村三郎シリーズは身近な社会の闇をテーマにしている感があるので、今回も内容が苦手と思われる方も少なからずおられるかもしれません。ただ、第一話目から人の尊厳を踏みにじる胸が焼けそうな加害者たちばかりが登場するものの、人物描写は相変わらず秀逸で最終的には被害者たちが多少なりとも苦しみから解放される(手段は悲劇的ですが)あたりは素直に感情移入が出来ますし、悪党(と表現してもいいような人間)共も然るべき報い(天罰?)を受けますから、少々腑に落ちなくとも読後感はそれなりによろしいのではないかと。
卓越した筆力とストーリー構成は健在ですので、このシリーズを全て読んでいる、または宮部みゆきさんファンの方には十分に楽しめる作品かと思います。」

「やっぱりこのシリーズは、後味があんまりよくないお話が多いですね。登場人物が好感が持てない人が多いというか。
でも本当に面白くて、一気に読めます。」

「他の方も書かれていたが、実に宮部さんは嫌な人間の描き方が秀逸。そういう人間が周りに実際に沢山いそうだなあと感じさせてくれる。新聞、テレビの社会面で取り上げられるような事件の主人公とは、本作の3作品に登場するような人物なのではないかと。一方で、大家さん一家は常識人(善人)ばかりであるかのような描き方のため、一層、作中の「悪い」人たちの嫌さ加減が際立っている。でも、そのうち、大家さん一家の闇の部分も描かれるのではないかとも期待(?)している。」


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