ベルリンで長年真面目に働いてきた肉屋の親方キュルツは、突然すべてが嫌になって家を飛び出し、デンマークの都市コペンハーゲンにやって来た。
そこで高価な密画をベルリンまで運ぼうとする女性に協力を頼まれる。
盗賊団や、謎の青年から狙われる密画を、人の良いキュルツは守れるか……。
「抵抗の作家」がナチスからの迫害下に著した、登場人物すべてがどこか憎めない痛快ユーモアミステリー。
〈解説〉深緑野分
????エーリヒ・ケストナー『消え失せた密画』#読了
ある事情でコペンハーゲンを訪れた肉屋の親方キュルツ氏。ふとしたことから新聞を賑わす大犯罪に巻き込まれる。
著者の児童文学ではないユーモア犯罪小説。愛すべきキュルツ氏が本当に最高だし、悪者たちもどこか憎めない。温かく優しい読後感。— リオノーラ (@Leonora_books) October 26, 2021
著者について
エーリヒ・ケストナー
ドイツの詩人・作家。一八九九年ドレスデン生まれ。第一次世界大戦で徴兵、除隊後、大学で文学を修めるかたわら文筆活動を開始。一九二九年に発表した『エミールと探偵たち』で児童文学作家として知られるようになる。ファシズム批判・自由主義的作風から、三三年発表の『飛ぶ教室』を最後にナチスによってドイツ国内での出版を禁じられ、焚書処分を受ける。以降、四五年まで著作はスイスから出版した。第二次大戦後、西ドイツのペンクラブ会長。六〇年国際アンデルセン賞受賞。七四年没。
小松太郎
一九〇〇(明治三三)年、大阪生まれ。慶應義塾大学を経て、ベルリン大学を卒業。帰国後、法政大学で教鞭をとるかたわら、ドイツ語の翻訳を手がける。訳書に、チャペック『ダーシェンカ』、ケストナー『ファビアン』『エミールと探偵たち』『飛ぶ教室』など多数。七四(昭和四九)年、死去。
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