怠惰の美徳 梅崎春生 (著), 荻原魚雷 (編集) 中央公論新社 (2018/2/23) 990円

なんとか入学した大学の講義はほとんど出席せず、卒業後に新聞社を志望するも全滅。やむなく勤めた役所では毎日ぼんやり過ごして給料を得る。

一日に十二時間は眠りたい。

できればずっと布団にもぐりこんでいたい……。

戦後派を代表する作家が、自身がどれほど怠け者か、怠け者のままどうやって生きぬいてきたのかを綴る随筆と七つの短篇を収録する文庫オリジナル編集。

真面目で変でおもしろい、ユーモア溢れる作品集。

著者について
梅崎春生
一九一五(大正四)年福岡市生まれ。小説家。東京帝国大学国文科卒業前年の三九(昭和一四)年に処女作「風宴」を発表。大学の講義にはほとんど出席せず、卒業論文は十日ほどで一気に書き上げる。四二年陸軍に召集されて対馬重砲隊に赴くが病気のため即日帰郷。四四年には海軍に召集される。復員の直後に書き上げた『桜島』のほか『日の果て』など、戦争体験をもとに人間心理を追求し戦後派作家の代表的存在となる。『ボロ家の春秋』で直木賞、『砂時計』で新潮社文学賞、『狂い凧』で芸術選奨、『幻化』で毎日出版文化賞。一九六五年没。

荻原魚雷
一九六九年三重県生まれ。文筆家。「大学在学中からフリーライターの仕事を始めるも、なかなか生計が立てられず、アルバイトで食いつなぎ、現在にいたる」というプロフィールを長く使い続ける怠惰ぶり。著書に『活字と自活』『書生の処世』『日常学事始』(本の雑誌社)、『閑な読書人』(晶文社)、『本と怠け者』(ちくま文庫)など。

「この方は戦前?戦後にかけて活躍された作家さんですが、やはりこういう人はいつの時代もいるものですね。何事に関しても面倒臭い、やる気が出ないという著者の気持ちが痛いほどよくわかります。でも、人間生きていくためには働かねばならない。重い手足を引きずるようにして、しょうがなく動く。現代人にも刺さる、まさに古典といった素晴らしいエッセイだと思います。」

「教科書にも載っていたことで有名な『猫の話』(輪唱より)を探していて出会った『蜆』に衝撃を受けました。それから色々と梅崎春生の Kindle本を探しているうちに、何かで読んだ チョウチンアンコウの話(この本に収録されています)を思い出しました。再読できてとても嬉しかったです。
梅崎春生が戦争での体験を通して感じた(悟った?)ことは、坂口安吾にも通じるものがあるように思います。言葉がすっかり軽くなり、理想とも呼べない単なるきれいごとが蔓延している現代、あらためて再読されるべき作家だと思うのですが…。」

「直木賞作家の梅崎春生は、かつてNHKの番組に出演した際に、ボソボソ声で「小説の書き方を忘れてしまった」とうそぶき、聞き手のアナウンサーを慌てさせました。これは、金のためなら何でも書きまくる流行作家たちへの痛烈な皮肉だったのでしょう。本書も然り。梅崎春生の怠惰は筋金入りであり、そんじょそこらのまやかし働き方改革とは違うのです。すべての現代人に読んでほしい名著です。」


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