森へ行きましょう 川上弘美 (著) 文藝春秋 (2020/12/8)

1966年ひのえうまの同じ日に生まれた留津とルツ。

パラレルワールドに生きるふたりの女性は、いたかもしれないもうひとりの「自分」。

進学、就職、恋愛、仕事か結婚か、子どもを産むか……

無数の分岐点に、騙し絵のようにかかわってくる同じ名を持つ恋人や友人。

昏い森に迷い込み、道を見失い、惑い、選びながら進んだ先にあるものは。

川上弘美、待望の傑作長編小説、ついに文庫化。

「いつかは通る道」は若いころは二本くらいしか種類がないと思っていた。

でも、全然そうではなかった。 ──ルツ(46歳)

森は永遠に続くと思っていたのに、たぶんそんなに長くない先に、わたしは森から出なければならないだろう。 ──留津(50歳)

「いつかは通る道」を見失った世代の女性たち。

選ぶ、突き進む。後悔する。また選ぶ。

そのとき、選んだ道のすぐそばを歩いているのは、誰なのか──

「ああ、この小説の構造も森なのだ。

ヘンゼルとグレーテルみたいにその仕掛けを一つずつ拾いながら、さああなたも森へ行きましょう」 浜田真理子 (解説より)

装幀は山口信博さん、装画・挿絵はミナ ペルホネンの皆川明さん。

「この世に生まれたからには、誰しも1回は「あの時ああしていたら」とか「こっちを選んでいたら」という思いにとらわれたことがあるはず。 「しようがなかった」と言いつつ、実は自分の人生は自分で決断し選択しているという当たり前の事実を目の当たりにさせられる1冊。パラレルワールドにおいても、自分を含めた登場人物をも巻き込んで運命に飲み込まれてゆく・・・生きていくことに対する意味を改めて考えさせられる。若い人のみならずある程度人生を重ねた人にこそ読んでほしいと思わせる佳作。」

「”るつ”さんと同世代を生きているので、自分の人生とだぶって見える箇所もあり、不思議な感覚で読み進めました。
自分が結婚していなかったら、どんな人生を歩んでいただろうと思っていたことも、読みながら重ね合わせて擬似体験させてもらった気分です。パラレルワールドでは、色々な”るつ”さんが後半はでてきますが、どの人生にもよかったと思えることがあり、反対に試練があり悩めるときありで、どの道を選んでも何かはあるというこ
とだろうと思いました。それならば、今歩んでいるこの道で、この場所でその時々に対応しながら様々な経験をしていけばいいんだと思いました。」

「女の一代記である。主人公は二人で同じ読みの名を持つが別人だ。しかし両者の住む世界には同じ名を持つ人物が別人格として複数出てくるからややこしい。主人公たちは、一部は著者のものだろうと思われる理科系大学での実験室生活や文学サークルでの交流を体験する。また、結婚生活の大きな問題である嫁姑問題は、本作でも大きな部分を占めるが、以前の小説のライトモチーフでもあった(これでよろしくて)。読後感は、映画で言えば神戸を舞台に四人のもう若くない女性たちを描いた”ハッピーアワー”に似ていると個人的には感じた。本作では、主人公2人とも、日記と言うほどではないが何かをノートに思いつくまま書き付けていることが重要な様に思う。6時間くらいで読んでしまったが、その時間で生まれた事を知らされた女の子が初老の年齢になって小説が終わる事を不思議に感じた。分かり合えない男女の機微をうまく捉えることに成功していると思う。」


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