![昭和16年夏の敗戦 猪瀬直樹(著) 中央公論新社 (2020/6/25)](https://abundant.jp/mystyle/wp-content/uploads/2020/07/rectangle_large_type_2_414d5dccc67bd3c0f6877ce05683f421.jpeg)
日本は負けるとわかっていた戦争になぜ突き進んでしまったのか…。
それが猪瀬直樹氏の圧倒的な調査力と深い考察によって書かれています。
昭和16年は1941年は開戦の年。
戦争に負けたのは1945年、つまり昭和20年です。
タイトルはどうして昭和16年なのか…。
当時(昭和15年)内閣総理大臣直轄の研究所として総力戦研究所が設けられました。
総力戦研究所には、陸軍や海軍、さらには民間から集められたエリートたちによって、
国家プロジェクトで戦争の研究を進めていた組織。
その機関による机上演習の結果が『日本必敗』だったのです。
選りすぐりのエリートを集めた結果であるにも関わらず、それは揉み消され破滅への道を日本は歩んで行きました。
そこにはどうのような意思決定があったのか…。
『昭和16年夏の敗戦』には、それが余すことなく書かれています。
※本書の初版は中央公論新社 (2010/6/25)今回は新版です。
「普段の生活のなかで、「これは本当にやるべきなのだろうか?」と疑問を持ちながら、「でも、あの人が言うのだから」と考えて、しぶしぶ承諾していることがある。それに似たようなことが、太平洋戦争開戦の時にも起こっていたようだ。
これは、太平洋戦争開戦の裏であった、もうひとつの戦いを描いた作品。
若い優秀な人材を集めて作られた総力戦研究所でシミュレーションされた結果は、実際とほぼ同じ。つまり、日本が負けることは十分予想されていたのだ。
それにも、関わらず十分な対策を取らないまま戦争に踏み切った。なぜ、シミュレーションさせたのか? シミュレーションの結果が悪かったなら、もっと慎重になるべきではなかったのか? 結果、沢山の犠牲が生んだこの教訓は現在生かされているんだろうか?そんなことを考えた。
戦争の裏にあるものは、こういう本を読んだり、話を聞かないと知らないことが多い。表面的にしか知らなかった戦争を違う角度から考えることができる本だった。良書だと思う。こう思えるのも猪瀬さんの高い取材力、筆力があったからかもしれない。
他の猪瀬さんの作品も読んでみたくなった。」