くちばみ 花村萬月(著) 小学館 (2020/10/15)

血で骨を洗う斎藤道三「父子の相克」一代記

古く蝮を「くちばみ」と呼んだ。鋭い毒牙を持つその長虫は、親の腹を食い破って生まれてくるという――。

時は戦国、下剋上の世。「美濃の蝮」と畏れられた乱世の巨魁・斎藤道三は、京の荒ら屋で生を受けるも、母に見捨てられ、油を舐めて命を繋いでいた。

油売りを生業にどん底から這い上がった父子は、いつしか国盗りという途轍もない野望を抱くようになる。

狙うは天下の要・美濃国。父に続き美濃入りした道三は、守護・土岐頼芸を籠絡し、側室・深芳野と密かに心を通わせる。

一方で、父の歪んだ支配欲に苛立ち、血の呪縛から逃れようと毒殺を夢想するようになる。

政敵を次々に抹殺し、遂に主君頼芸を追放し、名実ともに国主となった道三。

ところがその頃、長男義龍の胸中には、父への嫉妬と憎悪が渦巻いていた・・・。

本作品は、下剋上を成し遂げながらも実子に殺される道三の生涯を、三代にわたる「父子の相克」をテーマに活写する新感覚時代小説。

「暴力と情愛」の筆運びはますます磨かれ、「悪の爽快感」に溢れる物語世界は圧巻! まさに花村時代小説の到達点と言える作品です。


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