オールドレンズの神のもとで 堀江敏幸 (著) 文藝春秋 (2022/3/8) 726円

堀江敏幸さん『オールドレンズの神のもとで』が文庫になりました。

物語が生まれる瞬間の光を閉じ込めたような、色鮮やかな作品集。

文庫化にあたって、18の作品がどんな依頼の元に書かれたかを解説する、文庫版あとがきが書き下ろしです。

冒頭の「窓」は、「読売新聞」大阪版(2007年9月11日付)に掲載された。400字詰め原稿用紙10枚の短篇を発表後、書き手自身がそれについて語る「よみうり読書 芦屋サロン」という企画の一環だった。通常はひとりのところ、その回は特別にふたりの書き手の作品を同時に掲載し、たがいにそれを読んでどう感じたかを読者の前で語り合うことになっていた。相手は小川洋子さん。小川さんとの共著『あとは切手を、一枚貼るだけ』(中央公論新社、2019年)の企画は、このときのやりとりに端を発している。
(「記憶が薄れる前に――あとがきにかえて」より)

堀江 敏幸
1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年、同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年、『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞。おもな著書に、『郊外へ』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人―回送電車III―』『未見坂』ほか。

「初出を見ると、21世紀初頭のものもあるほど時間的に幅があり、初出の場もいわゆる文芸誌ではない物がほとんである。数ページの短い作品も多い。評者は著者のエッセイを数冊読んで、その文章の質に感心し今回小説も読んでみた。歯医者の父親の肖像画の話とか地方の民俗研究家の話などピンとくるものもあったが、そうでないものも多かった。評者の小説の好みは、長大なものに好意的で、詩的なキラリと光る一文といったタイプに反応する感覚を欠いていることには自覚的であるので、うまく合わなかっのだろう。小谷野敦が堀江作品を評して志賀直哉の短編という言葉を書き付けていたのをどこかで読んだが、評者は志賀の短編が苦手である。」


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