太陽の季節 石原慎太郎 (著) 新潮社; 改版 (1957/8/7) 649円

ベストセラー、映画化、「太陽族」、PTAが大攻撃……。

戦後の日本社会に衝撃を与えた若き石原慎太郎の鮮烈なデビュー作。

挑戦し、挑発する全5編。

石川達三、井上靖、中村光夫、舟橋聖一は〇、佐藤春夫、宇野浩二、丹羽文雄、滝井孝作は×、芥川賞選考会でも評価は真っ二つ!

女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……。

退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。

最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。

人生の真相を虚無の底に見つめた「灰色の教室」、死に隣接する限界状況を捉えた「処刑の部屋」他、挑戦し挑発する全5編。

【目次】
太陽の季節
灰色の教室
処刑の部屋
ヨットと少年
黒い水
解説:奥野健男

本書収録「太陽の季節」冒頭より
竜哉が強く英子に魅かれたのは、彼が拳闘に魅かれる気持と同じようなものがあった。
それには、リングで叩きのめされる瞬間、抵抗される人間だけが感じる、あの一種驚愕の入り混った快感に通じるものが確かにあった。
試合で打ち込まれ、ようやく立ち直ってステップを整える時、或いは、ラウンドの合間、次のゴングを待ちながら、肩を叩いて注意を与えるセカンドの言葉も忘れて、対角に坐っている手強い相手を喘ぎながら睨(ね)めつける時、その度に彼は嘗(かつ)て何事にも感じることのなかった、新しいギラギラするような喜びを感じる。……

石原慎太郎
1932(昭和7)年神戸市生まれ。一橋大学在学中に「太陽の季節」で芥川賞を受賞。1968年に参議院議員に当選し、その後衆議院議員として環境庁長官、運輸大臣などを歴任した。1999年に東京都知事に就任、四選をはたす。『国家なる幻影』『弟』『火の島』など著書多数。

「まあ、なんというか、ここのレビューで星を1個にし、この作品のモラルの欠如や、品性下劣な点を罵倒している人々。笑えますね。
なぜかって、この作品が芥川賞受賞した当時、選考委員の佐藤春夫や宇野浩二なんかが、おんなじ理由でもう批判していたから。
あらまあ、まだそんな感覚で文学を語る人が、いるのかと。
倫理や良識や品性なんかを文学に求めているなら、それは完全に誤解、いや、間違いですよ。いやあ、笑えます。
この作品自体は、ボンボンの甘ったれた物語でもあるので、そんなに面白くはない。
(同時期なら大江や開高の方がまあ、面白いよね。)
しかし、いくつかの場面、いくつかの叙述は非常に印象的で、優れているとは思う。

とりあえず、文学に倫理や良識や品性を求める人は、実は文学を必要としない人々なんだと、自覚をして欲しいものだ。」

「まず、小説で物語として描かれていることは物語として評価するのが当たり前の姿勢です。
そこに描いていることがどれだけ倫理的に外れていようが、それはそれ、これはこれ、として判断できるようにならないと小説という創造性が台無しになってしまいます。

女、学校、暴力、海、死
これを組み合わせてここまで退廃的で暴力的で身勝手な内省を描くことができるのか。

今の時代から見ても明らかに「お坊ちゃん」育ちのやり場のないエネルギーの発露。
全く私が育ってきた環境とは異質の集団たちの思考回路ですが、私の知っている金持ちの倅たちがやっていることや思考回路にそっくりなような気がして
「時代の変化によって環境が同じ人間の中身とはそこまで進化しないんだな」
という不思議な納得感がありました。」

「まあ豊洲の問題は脇において、純粋に作家としても物議をかもしたこの名作(迷作?)にもう一度いきついた。
結局時代をゆり動かすだけの熱量は、いまだに認めざるをえない。
多少乱暴な作品だけれども、彼と彼の弟氏の青春らしさは、この太陽の季節を通して感じうるものがある。」


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