![愚か者の石 河崎秋子 (著) 小学館 (2024/5/29) 1,980円](https://abundant.jp/mystyle/wp-content/uploads/2024/06/12f2d7e8-6064-467c-ae1a-5cca8e802776.__CR87017461080_PT0_SX970_V1___.jpg)
生きることは、まだ許されている。
明治18年初夏、瀬戸内巽は国事犯として徒刑13年の判決を受け、北海道の樺戸集治監に収監された。
同房の山本大二郎は、女の話や食い物の話など囚人の欲望を膨らませる、夢のような法螺ばかり吹く男だった。
明治19年春、巽は硫黄採掘に従事するため相棒の大二郎とともに道東・標茶の釧路集治監へ移送されることになった。
その道中で一行は四月の吹雪に遭遇する。生き延びたのは看守の中田、大二郎、巽の三人だけだった。
無数の同胞を葬りながら続いた硫黄山での苦役は二年におよんだ。
目を悪くしたこともあり、樺戸に戻ってきてから精彩を欠いていた大二郎は、明治22年1月末、収監されていた屏禁室の火事とともに、姿を消す。
「愚か者の石/河崎秋子」本のタイトルの化粧扉の原画はこんな感じでした。装画のラフは囚人と看守で何パターンか考えていたのですが、この場面も描きたくなって、内容読んでないと伝わりにくいかなと迷いながら一応ラフ描いて提出したら、化粧扉に採用されてモノクロで描きました。 pic.twitter.com/wTwODWy6su
— 大野博美 (@hiromio0) June 14, 2024
明治30年に仮放免となった巽は、大二郎の行方を、再会した看守の中田と探すことになる。
山本大二郎は、かつて幼子二人を殺めていた。
「なあ兄さん。
石炭の山で泣いたら
黒い涙が出るのなら、
ここの硫黄の山で涙流したら、
黄色い涙が出るのかねえ」
直木賞受賞(『ともぐい』新潮社刊)後、第一作!
「地獄に光が差したとして、仮初めであってもお前はそれに手を伸ばすのか」
――河崎秋子
ブレイク作『絞め殺しの樹』に連なる、大河巨編!
河崎節が冴え渡る、圧巻の長編監獄小説!
「生きている限りは自分に与えられた場や理不尽さからは逃れ得ないものではあるけど、その苦役みたいな人生の中に最低限でも意味を見出すのであれば……とそんな事を考えさせられた一冊であった。」
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