絶筆 石原慎太郎 (著) 文藝春秋 (2022/11/7) 1,650円

2022年2月1日に死去した石原慎太郎氏。その最後の文学的結晶――

限りなくピュアな初恋の記憶を描いた「遠い夢」、死後公開された「死への道程」など、単行本未収録のまま残された作品を収録。

「太陽の季節」から67年、まさに「白鳥の歌」と呼べる一冊。

「石原慎太郎を読むのは「あるヤクザの生涯 安藤昇伝」(2021/5月)以来になります。2022/2月に亡くなられて以降、幾つかの著作が発表されましたがなかなか手に取ることができませんでした。私は遅れてきた「太陽族」世代として10代後半に石原慎太郎氏の初期の著作を貪るように読んだ時期がありますが、氏が政界に打って出てからは次第に心が離れていきました。(「弟」は別です(笑))
「絶筆」(文藝春秋)を読み終えました。本作は、2017年から2022年までに発表された5つの短編と1つのエッセイが収録されています。

「遠い夢」・・・・・おきゃんな娘への恋心。祭壇にまかれる白い薔薇。とてもいい。
「空中の恋人」・・・知覧。特攻隊の生き残り。祭壇にまかれる白い薔薇のように弧を描くF10F。
「北へ」・・・・・・まるで日活アクション映画の主人公のようにアイデンティティを喪失した俺が東京を捨て「北へ」と向かいます。311。そしてもっと「北へ」。独りの終焉と独りの始まり。
「愛の迷路」・・・・ボクシング。若い頃に読んだ「亀裂」を真っ先に想起しました。試合に勝とうが負けようが「自我」は輝きを保ったままそこにあります。
「ある結婚」・・・・パイロット。運がとても強い男のとてもおだやかな結末が何かをシンボライズしているかのようです。
「死への道程」・・・この著作の中唯一のエッセイ。ヘミングウェイもアンドレ・マルローも超えて、ナーダ(無)という名の強烈な自我。

2022/8月、葉山の一色海岸から森戸海岸への道程の中、これが私なりの「石原慎太郎」氏への追悼であればと思っていましたが、今回「絶筆」(文藝春秋)を読み、氏への様々な思いを整理して文学者としての「石原慎太郎」を読めたことに深く感謝したいと思います。
巻末の石原延啓氏の「解説」で描かれているような「この世」と「いずく」の境界を思いながら、「石原慎太郎的世界」を最後まで共有させていただきたいと思います。」


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