親不孝介護 距離を取るからうまくいく 山中浩之 (著), 川内潤 (著) 日経BP (2022/10/7) 1,760円

「長男だから、親を引き取るか実家に帰らないと」→必要なし!
「家族全員で、親を支えてあげないと」→必要なし!
親のリハビリ、本人のために頑張らせないと→必要なし!
親が施設に入ったら、せめて、まめに顔を見せに行かないと→必要なし!

「親と距離を取るから、介護はうまくいく」。

一見、親不孝と思われそうなスタンスが、介護する側の会社員や家族をそしてなにより介護される親をラクにしていく。

電通、ブリヂストン、コマツなど大手企業の介護相談で活躍中の川内潤さん(NPO法人となりのかいご代表)のアドバイスの元、遠距離の「親不孝介護」に挑んだ編集者の5年間の実録。

親の介護が始まる前に、これを知っておくのと知らないのとでは、働き方にも介護のクオリティにも大きな差が付きます。

公的支援を受けるべきかどうかのチェックシート、部下の介護離職を止めるための想定問答集も掲載!

さらに詳しい内容は、以下からどうぞ。

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(以下、本書「はじめに」より)

さぞかし迷われたと思います。よくぞ、この本を開いてくれました!
いや、ぜひその勇気を称えさせてください。「介護」という文字が入っているだけで、目をそらしたくなるのが人の素直な気持ちというものです。あなたがどんな方かは存じ上げませんが、おそらく「介護について考え始めた瞬間に、現実に向き合わねばならなくなる。嫌だなあ」と、お感じなのではないでしょうか。

すっごくよく分かります。
なぜなら、私がそうだったからです。

一人っ子で東京で家族と暮らし、母親はもう80歳、新潟で独居中。帰省のたびに「母さんも、年取ったな」と思うけれど、まだなんとか1人で暮らしていけそう。何かが起きる前に、介護の仕組みとか認知症とか、勉強しておいたほうがいいんだろうけれど、仕事が忙しいし、家族も大事だし、まあ、そのうちに……。

もしかしたらあなたも、こんな感じなのではありませんか?
あるいは、親御さんの介護を始めたけれど、親を助けるつもりが、つい、きつい言葉ばかり出てしまい「どうして自分はこんな親不孝をしてしまうんだ」と、ご自身を責めている。そこで「親不孝介護」という言葉が、目にとまったのかもしれません。

この本は、「いずれは親の介護と向き合うことになりそうだけれど、細かい話はともかく、どう考えてやっていけばいいんだろう」という方、そして「介護を始めたら、自分が親に冷たくしてしまうことに驚き、悩んでいる」方、その両方に向けた内容を、私(山中、編集Y)の実体験を通してお話ししていきます。

サンプルは私、そしてたくさんの会社員たち

育ててもらった恩もある。心から感謝している。そんな親が年を取って衰えたら、手取り足取り、そばにいて面倒を見てあげたい。そう考えている人が世の中の大多数でしょう。私もそうでした。そう思っている人にとって「親不孝介護」という言葉は、きっとネガティブに響いたと思います。介護イコール、究極の親孝行であるべきでは??そんなふうに感じられたかもしれません。

露悪的な言葉を使ったのは、もちろん、人の目にとまりたいということもありますが、それだけではありません。

親の介護が「辛つ らく苦しい」ものだと感じられ、現実に多くの方が悩んでいるのはまさに、

介護=親のそばにいる=親孝行

という、強固なイメージがあるからなのです。

これを打ち破るだけで、介護はグッと楽になるのですが、親と適切な距離を取ること、近づきすぎないようにすることは、「そばにいる=親孝行」のイメージがあるためとても難しい。そこで、「距離感」を忘れずにいるために、「親不孝介護」という言葉を作りました。

適切な距離を取ることができれば、親の介護のストレスは激減します。自分の5年間の
体験がその証拠です。遠距離、独居の親の介護が「えっ、こんなもん?」で済むこともあるんです。

「おいおい、サンプル数1かよ」と思われるでしょうが、私に「親不孝介護」を教えて
くれたこの本の共著者、NPO法人となりのかいご代表・川内潤さんは、主なところだけでも、電通、テルモ、ブリヂストン、大日本印刷、日鉄ソリューションズ、コマツ、オリンパスマーケティングなどを始めとする企業で、2017年から2022年夏現在までのべ1743件の従業員の介護相談を行い、その経験をもって「親の介護は、いわゆる『親孝行』のイメージとは逆のやり方で行うべきだ」という考えに至りました。そして、どの企業でも「川内さんのアドバイスに救われた」という声が上がっています。決して、小さな事例で全体を語る、というよくある体の本ではありません。

この本の構成は、まず私の母親の介護の体験記という具体例をお見せして、その体験を川内さんと振り返り、どんなロジックが状況を変えていったのかを説明することで、どなたでも役立つように汎用化し、最後に各章にまとめ、という構成になっています。最初は「親の面倒を見なければ」との思いで悪戦苦闘していた私が、「親不孝介護」の考え方に触れて、どんどん楽になっていく様子が、お分かりいただけると思います。

≪目次≫
はじめに~「親不孝介護」のススメ

第1章 考えるのは、今日じゃなくってもいいんじゃない?
ダマされた!と思って、とにかく1日でも早く親に会うべし
「まだ早いかな?」はたぶん「もう危ない」です。

第2章 平気でウソをつくなんて。母さん、そんな人だっけ?
老いた親が見せる弱さ。それは子どもを傷つけ、怒らせる
「親孝行の呪い」を、親から離れることで回避する

第3章 母さん。「介護保険証」はどこですかー?!
親に公的支援を受けさせる。面倒は多いけど、笑顔で報われた
働く人は申請の「代行」で介護保険を活用しよう

第4章 突然の大ピンチ。母が日本語を話せなくなった?!
信じられないトラブルも「起きるときは起きる」、それが介護
介護に「完璧」「万全」を求めてはいけません

第5章 親の妄想、そしてコロナ禍。理想の施設は見つかるか?
介護スタッフの観察力が母の理想の施設へと導いた
施設選びも「親孝行」が目を曇らせる

第6章 母、施設へ。5年間を振り返って「親不孝介護」の結論は?
ホームの担当者さんが話してくれた正解なき介護の「正しい答え」
施設とうまくタッグを組める家族、組めない家族

第7章「親の介護」は自分の生き方を考えるチャンスかも?
会社員の価値観を持ったままだと介護はツラい

第8章 なぜ「デキる社員」ほど介護離職に突き進むのか?
人事の方に送る「優秀社員介護離職阻止マニュアル」

第9章 すでに親と同居していたらどうすればいい?
「親と距離を取る」のが難しい人へのアドバイス

介護関係の本をもっと読んでみたい方へ

おわりに~家族にしかできない「親不孝介護」

「偶然出逢ったこの本。タイトルは若干露悪的な匂いもしますが、非常に誠実な構成です。単なるノウハウ本とか、言いっぱなしの暴論で終わる内容ではありません。「真面目かつ良い人であればあるほど、介護に苦悩していく」という構造をきちんと説明した上で、多くの人が陥りがちな部分について丁寧に解説してくれています。後半から終盤にかけては、思いがけない深い話に辿り着き、この本を読んで良かったと心から思いました。当方は医療職ですが、仕事としての理解と「自分事」になった時の理解は全く異なることを、日々痛感しています。「分かってくれる人」が居ること、その上で介護者に「自分自身の人生も大事にして良いのだ」と語りかけてくれるこの本は、間違いなく星5つです。おすすめです。」

「介護を自分でやろうとすることはどんどん自分を追い詰めること、逆に要介護者と子どもとが離れている方が介護はうまくいく、というような話。そういえば、自分は妹や子どもに家庭教師することはできなかった。赤の他人に教えるのは出来ても、身内は無理なんである。なんでこんなぐらいのことができないのか?とイライラする。同じことが介護でも言えるのかもしれない。プロにお任せできることはお任せする、というスタンスこそ大事だということだ。」

「本の内容は私の今の考えと全く同じでした。改めて考え方に間違いがないことを認識できてよかったです。いままでの自分なりの葛藤も反芻できました。それにしてもY氏の体験と丸かぶりでなんか懐かしさも込み上げてきました。きっと多くの人はほぼ同様のパターンを踏んでいるのでしょうね。Y氏のドタバタの臨場感に多くの人から共感がえられると思います。撤退戦と不確実性が仕事の考え方と真逆であるところを突いているのも秀逸でした。妻の親戚で典型的な親孝行介護に陥って離職、同居、ひとり介護にはまっていた人がいました。何度か本の内容とほぼ同じことを諭しましたが聞き入れられず、ボロボロの状態でした。この前被介護者が亡くなり幕を閉じましたが。同僚や知人から愚痴や相談を受けることも増えています。今後はまずこれを読めと薦めます。」


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