ペルソナ脳に潜む闇 中野信子(著) 講談社 (2020/10/21)

人間関係が苦手だった私は、その原因を探ろうと、いつしか「脳」に興味を持つようになった。

親との葛藤、少女時代の孤独、男社会の壁…人間の本質をやさしく見つめ続ける脳科学者が、激しくつづった思考の遍歴。初の自伝!

「脳は一貫していることの方がおかしいのだ。自然ではないから、わざわざ一貫させようとして、外野が口を出したり、内省的に自分を批判したりもするのである。
一貫させるのは、端的に言えば、コミュニティから受けとることのできる恩恵を最大化するためという目的からにすぎない。
私たちは、複数の側面を内包しながら、これらを使い分けて生きている。
私たちの世代はこれを自覚的にできる人が旧世代よりも増えただろうが、人間というのは世代を問わず、そういうふうにできている。
仕様だといってもよいだろう。
わたしのペルソナ(他社に対峙するときに現れる自己の外的側面)は、わたしがそう演じている役である、といったら言い過ぎだと感じられるだろうか?
あなたが、わたしだと思っているものは、わたしではない。
一時的に、そういう側面を見て取ってもらっているだけのことである。
わたしは存在しない。これは悲しいことではない。透明な存在であることを嘆く必要はない。だからこそ、来るべき変化に対応することができるからだ。もう変化のときは来ている」(中野信子)

「脳科学に興味があり、中野さんの著書はいくつか読んできましたが、本書を読んでみて、彼女がなぜ脳科学に興味を持ったのか、深く理解することができたように思います。」

「人気脳科学者の自伝か、どんな内容なのだろう。そう思ってこの本を手に取ったが、目次を見て驚いた。
通常の自伝なら編年的に書かれるはずである。しかし、この本は、現代から過去に遡りながら書かれるのである。
これには少々当惑したが、読んでみてその構成の意図に気が付いた。
この本は、著者の「記憶の闇」に潜り込んでいく本なのである。――だから、現在から過去に戻りながら書かれる。
「意識の流れ」のような特徴的な体裁も面白いが、もちろん著者の内面に迫っていく内容も興味深い。
「女らしく」「〇〇らしく」という生き方を求められることなどの、いまの社会の息苦しさに対する著者の思いなどが包み隠さず書かれており、著者の中野信子さんという人物を知る上でも、また自分の人生を見つめなおすうえでも面白い本である。
一気に読むことができた。」

「自分語りは恥として、公に自分語りをする他者との間に線引きをしながらも、本書は壮大な自分語りに終始している印象を受けました。
本来の自分語りに伴う(そしてそれが魅力であるところの)潔さがなく、様々な「知的な脱線(とご本人が考えているだろうこと)」がゆえ冗長で、最終ページで思わず「これだけ!?」と呟いてしまいました。
なんとも痛々しい読後感でした。」


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