それでも選挙に行く理由 アダム・プシェヴォスキ(著)、粕谷祐子(翻訳)、山田安珠(翻訳) 白水社 (2021/9/18) 2,090円

選挙とは「紙でできた石つぶて」である。

選挙は、民主主義という統治形態において必要不可欠な制度である。

しかし一般市民にとっては、選挙で選ばれた政治家や政府、さらにはそれらのもとで立案・実施される政策に失望することが日常茶飯となっている。

本書では、選挙の思想的背景、歴史的な発展経緯、世界各国での選挙政治の比較などを通じて、なぜ選挙が落胆につながるのかが明らかにされる。

政治学研究の蓄積が示すところによれば、選挙は、国民の多くが望ましいと思う政策をもたらすことはほとんどなく、経済成長や経済格差の是正にも効果がなく、また、有権者が政府を効果的にコントロールするうえでも役に立たない。

それでも選挙は、ある程度競合的に行なわれた場合、争いごとを平和裡に解決するという役割を持つがゆえに重要である。

著者のプシェヴォスキは、長年にわたり選挙および民主主義に関する実証研究を世界的に牽引してきた、比較政治学の重鎮だ。

さまざまな理想論を排除し、選挙の本質は暴力をともなう紛争や対立を回避するところにあるという本書の結論は、落胆する多くの市民を励ますに違いない。

「邦題から「選挙に行く理由」が説かれているように思うかもしれないが、むしろ「選挙制度を維持する理由」が書かれているのであって、本書は選挙啓発のための書ではない。」

「200ページほどの短い本だが、よくある民主主義概説とはやや違ったタイプの民主主義論だと感じた。
短い本なので、細かいところでは議論不足と感じた所もある。例えばチェック・アンド・バランスを設けて権力を分散させて多数の暴政を防ぐ制度と比べ、単純多数決の方がむしろ権利侵害をしないという、わりと直感に反する主張をしているが、ただ本が引用されているだけで何も論証してくれていないのは説得力に欠けると感じた。」


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