あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ
北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。
昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。
しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。
戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。
幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。
時代は昭和。幼少期からの過酷で不当な労働。声を上げることもできず搾取される弱者達。
教育は彼女を救い、新たな希望があるかに思われたが..
絞め殺しの樹は菩提樹とも呼ばれ、他の木に絡みつき栄養を奪い枯れさせる。我慢すること、黙ることは決して美徳ではない。 pic.twitter.com/bAQaWWzpoZ
— なな (@uminoshirabe) July 12, 2022
数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。
養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。
数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。
「深くて切ない物語でした。辛い人生を歩み続けたミサエ。物語はミサエからミサエの息子、雄介に引き継がれる。雄介の強さがせめてもの救いか。」
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