一季奉公を重ねて四十も過ぎた。己れを持て余していた男は、密かに想いを寄せていたお手つき女中・芳の二度と戻れぬ宿下がりの同行を命ぜられる。
芳への理不尽な扱いに憤り、男は彼女に奉公先を見返す話を持ちかけた。
初めての極楽を味わったその夜、芳は男を刺し、姿を消した。
2022年、今年の2冊目。青山文平「底惚れ」#読了
初めて読む作者の独特の語り口や時代物特有の表現で没入するまで時間がかかったけど勢い付いたらあっという間。
本望を遂げられるのか、底惚れが通じるのかと進むうちラスト5行で「やられた!」ってなったと同時にタイトルの本当の意味がやっと見える。 pic.twitter.com/2FQw211RYO— ケムリ (@kemurin921) January 10, 2022
芳に刺されて死ねるのを喜ぶ男。
しかし、意に反して男は一命をとりとめた。
人を殺めていないことを芳に伝えるため、どん底の岡場所のどん底の女郎屋の主となって芳を探すが……。
「武家の下働きの男が、紆余曲折を経て遊女屋を開き増やしていく。そんな話なのですが、店を開く目的をあきらかにしてブレずしっかり伝える、働く者にとってよい店にする、働くものから選ばれる店になるなど、今のビジネスの世界でも大切なことがしっかりと書かれています。」
「私の好みとすれば、重厚な武士世界を描いたものが好きだが、この本の場合は、青山氏の小説に取り組む変幻自在さを目の当たりにしたようで、これはこれで楽しめた。どのように落ち着かせるのかと思ったが、終着の記述も思いがけないものではあったものの、心地よく読み終えたものである。」
「小生、いつも参考にさせて頂いている方々の様な気の利いたレビューは書けません。でも作者には底惚れしています。」
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